日本の食卓にも溢れる 米FDAが禁止に動く「トランス脂肪酸」

 ファストフードやパン、ケーキが動脈硬化を引き起こす――。
 米食品医薬品局(FDA)は7日、「トランス脂肪酸」の使用を禁止する方針を固めた。トランス脂肪酸は、反すう動物の肉や乳にも含まれるが、多くは植物油に水素を添加して固形化する際にできるという。

 米国では、06年に使用表示を義務付けていたものの、FDAのハンバーグ局長は、「摂取量は依然、公衆衛生上の重大な懸念を招く水準」と強調。規制することで年間2万人の心筋梗塞患者の発生を防ぎ、心臓疾患による死者数も7000人減らせるとした。

 しかし、この“危険物質”は、日本では規制対象外。世界保健機関(WHO)が認める「1日当たりの総カロリーの1%未満」の基準を満たしているためで、消費者庁は、「日本人の摂取量は、ほとんど健康に影響ない数値とみています」(食品表示企画課の担当者)という。だが、米国流のファストフード文化はどんどん深化している。基準を超えて摂取している人も増えているだろう。

 研究生活50年の脂質生化学者で名古屋市立大名誉教授の奥山治美氏はこう警告する。

「トランス脂肪酸を含んだマーガリンやショートニングは、バターより長持ちする上、5分の1以下のコストで作れるため、産業界は重宝している。もっとも、心臓病のほか、ホルモンバランスを狂わせて、子どもが生まれにくくなるという弊害も指摘されている。ただ、原材料名の表示はあいまいで、“トランス脂肪酸”とは明記されない。味で見分けることも不可能です。表示については、過去には学会で問題になったし、09年当時の福島瑞穂内閣府担当大臣は表示義務化に向けた検討を消費者庁に指示したにもかかわらず、国は産業界に配慮したのでしょう」

 奥山氏によれば、ケーキ、お菓子、パン、ピザ、揚げ物のせんべいやドーナツ、コーヒーのクリーム、ソフトクリームなどは要注意。まず含まれていると考えた方がいい。

「原材料の欄にマーガリン、ホイップクリーム、ファットスプレッド、食用油脂、植物油脂、精製加工油脂などと記載されていたら、大抵入っていると考えられます」(奥山治美氏)

「食品偽装」も平然と行われる日本の食卓。消費者は自分の判断で安全を“選ぶ”しかない。

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