1年でγ―GTP半減例も…しじみ汁はやっぱり肝臓に効く

 二日酔いにはしじみ汁――。昔からよくいわれる食べる健康法だ。飲み会の前に、「しじみ○個分の×××」といったドリンク剤やサプリメントを飲んだことがあるサラリーマンも多いに違いない。しじみはアルコールを分解する肝臓にいいといわれているが、本当なのか。

 65歳のTさんは酒が大好きで、晩酌を欠かしたことがない。毎日、少なくとも缶ビール2本、焼酎のウーロン茶割りを小ジョッキ5杯は飲む。そんな生活を何十年も続けているため、健康診断ではいつもγ―GTPの数値が高かった。

 γ―GTPは肝臓などで作られる酵素で、タンパク質を分解・合成する働きがある。アルコールが肝細胞を破壊した時などに血液中に漏れ出してくるので、血液中のγ―GTPの濃度が高ければ、肝臓障害が疑われる。アルコールに敏感で、肝機能が正常かどうかを判断するうえで重要な数値だ。多くの医療機関で使われているγ―GTPの上限値は「55IU/l」。Tさんは、2年前が「77」、昨年が「86」と、上限値をはるかにオーバーしていた。

 このまま放置して酒を飲み続ければ、肝炎→肝硬変→肝臓がんと進行しかねない。Tさんは物は試しと、毎朝しじみの味噌汁を必ず1杯飲む生活を続けることにした。
 1年後、健康診断の結果を見て驚いた。γ―GTPの数値が「49」にまで激減していたのだ。酒量を減らしたり、食生活を改めたわけでもなかったので、やはりしじみの効果があったのだろう。Tさんは、今もしじみの味噌汁を飲み続けている。

「食と栄養 常識の落とし穴」の著者で、東北女子大家政学部教授の加藤秀夫氏は言う。
「しじみだけの効果とは言い切れませんが、しじみに豊富に含まれているオルニチンやシトルリンなどの遊離アミノ酸が、肝臓の解毒作用をアップさせたのでしょう。人間の体内では、食事などで摂取したタンパク質がアミノ酸に分解され、その過程で有毒なアンモニアがつくられます。アンモニアは肝臓の尿素サイクルによって無毒化されていますが、アルコールを過剰に摂取すると肝臓の処理能力が低下します。オルニチンやシトルリンは肝臓の処理能力を補助する働きがあるのです」

 しじみには、100グラムあたり(約35個)10.7~15.3ミリグラムのオルニチンが含まれている。これは、アサリやハマグリといった他の魚介類だけでなく、オルニチンが含まれているチーズなどの食材と比べてもブッ千切りに多い。

 また、タウリンやアラニンといった非必須アミノ酸、ビタミンA、ビタミンB 2、ビタミンB1 2、鉄といった栄養素もバランスよく含まれている。

「栄養分をまとめてバランスよく摂取するには、しじみの味噌汁がうってつけですが、身までしっかり食べた方がいい。オルニチンやシトルリンは水に溶けるので汁の中に出てきますが、他の栄養分は身に含まれたままというものも多いからです。低脂肪で消化や吸収にも優れているから、肝臓への負担も少ない。毎日、食べても過剰摂取にはなりません。ドリンク剤やサプリメントは、あくまでもオルニチンなどの成分だけを抽出したものなので、バランスを考えるとしじみそのものには及びません」(加藤氏)

 しじみに含まれているタウリンも、オルニチンと同じく肝臓の解毒作用を活性化させるが、こちらはビタミンCが一緒にないと吸収率が落ちてしまう。しじみの味噌汁を飲んだ後、ビタミンCが豊富な果物をデザートとして食べれば、さらに肝機能アップにつながる。

 酒好きは、さっそくしじみの味噌汁を毎朝飲みたい。