風邪薬は要注意…前立腺肥大なら知っておくべき4つのポイント

 前立腺が肥大化する前立腺肥大症(以降、肥大症)は、50歳以上の男性の5人に1人が悩んでいる病気だ。年を取ったらだれでもなる病気だからと正しい知識なしに放置している人も多い。肥大症で押さえておきたいことを、浦和の石井クリニック・石井泰憲院長(泌尿器科専門医)に、知っておくべき4つのポイントを聞いた。

<尿がパンパンにたまっているのに出ない状態になる可能性あり>

(1)がんリスクがある

 肥大症と前立腺がんは全く別の病気だ。肥大症からがんを発症するということはない。怖いのは、「肥大症だと思っていたら、がんだった」というケースだ。

「前立腺がんは初期の段階では症状がありません。がんが大きくなると、尿が出にくい、排尿後もスッキリしない(残尿感)などの症状が出てきますが、肥大症の症状と似ているため、見過ごす人が少なくありません。必ず泌尿器科で検査を受けるべきです」

(2)薬の種類に注意

 肥大症の症状は、尿が出にくい、残尿感、頻尿(夜間頻尿も含む)など。夜間頻尿は夜中に2度も3度も目が覚めるので、睡眠の質も低下する。深刻に悩んでいる人も少なくないが、これらの症状は薬物治療で劇的に改善される。

「1週間以上、薬を継続して服用すれば症状はよくなります」

 ただ、薬を服用する時は、前立腺がんの有無を調べる腫瘍マーカー「PSA」の数値の見方に気を付けなければならない場合がある。

「肥大症の治療薬アボルブ(5α還元酵素阻害薬)は、男性ホルモンの前立腺での作用を抑え、前立腺を小さくします。するとPSAの数値が低くなる。アボルブの服用では、PSAが本来の数値の半分になります」

 つまり、がんでPSAが上がっていても、気付かないことがあるのだ。「泌尿器科医なら薬との関係をチェックしますが、肥大症はありふれた病気なので、専門外の医師が診ているケースも珍しくありません。その場合は、服用薬を自ら申告すべきです」

(3)風邪薬が危険

 風邪薬のほとんどに、交感神経を刺激するエフェドリンの成分が含まれている。

「肥大症の人は、肥大化した前立腺が尿道を圧迫しています。そこにさらにエフェドリンで交感神経が過剰に刺激されると、尿道がぐーっと締め付けられ、尿が出なくなる急性尿閉を起こします。尿がパンパンにたまっているのに出ないのですから、非常に苦しい。管を通して尿を排出させたり、場合によっては手術など、病院での緊急の治療が必要になります」

 風邪薬と並んで要注意なのが、アルコール。特にビールだ。これも急性尿閉の原因になる。

「前立腺が充血してより尿道を圧迫し“出口”が狭くなるのに加え、腎臓からたくさん尿が作られることが問題。膀胱(ぼうこう)に一気に尿がたまり、膀胱の壁が薄くなって伸びた風船のようになります。膀胱が収縮できず、尿が排出されないのです」

(4)“頻尿”の意味を取り違えないこと

 肥大症の頻尿は、トイレの回数が増えることだ。日中なら8回以上、夜間なら2回以上が目安。1回ごとの尿量は、通常より多くない。

「一方で、過活動膀胱の場合も頻尿が症状にあります。膀胱の不随意の収縮で尿がわずかにたまっただけでもトイレに行きたくなる尿意切迫感があり、結果的にトイレの回数が増えます」

 過活動膀胱では抗コリン薬を用いる。しかし、この薬を肥大症の頻尿でいきなり用いると尿閉を起こす可能性がある。まず残尿を測定し、少ないことを確認してから、徐々に増量しなくてはならない。

 ところが、泌尿器科医以外の医師にかかっていると、それが行われないことがあるのだ。

 肥大症をナメてはいけない。

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