スポーツ中の突然死を防ぐ「SpO2チェック」って?

 スポーツをするのに適した季節だが、中高年は「心臓が発するサイン」に要注意だ。少し前の報告になるが、1984年から5年間に起きたスポーツ中の突然死645人のうち、心臓病による死亡が7割以上を占めていたという。

 高血圧や糖尿病など何らかの疾患があったり、ストレスが強かったり、睡眠不足など日頃の不摂生で疲れがたまっていたりする時に、運動で心臓に負担がかかると、それが引き金になって心筋梗塞などを起こす。

「競技別では、59歳以下ではゴルフ、ランニング、水泳の順に、60歳以上ではゴルフ、ゲートボール、ランニング、登山の順にスポーツ中での突然死が多いです。必ず前兆があるので、それを見逃さないことが重要です」

 こう言うのは、救急医療の第一人者である愛知医科大学・野口宏名誉教授(愛知県救急医療情報センター統括センター長)だ。野口氏に“前兆”と対策について話を聞いた。

「スポーツ中の突然死につながる心臓病は、6割以上が不整脈が原因です。次のような症状が出たらすぐに救急車を呼ばなくてはなりません」

 それは、息苦しい、熱っぽい、冷や汗、胸焼け、動悸、息切れ、呼吸が上がるなどだ。

「心筋梗塞の治療はゴールデンタイムと呼ばれる3時間以内に開始すると生存率が高くなります。救急車の搬送や病院での検査にかかる時間を考えると、迅速に行動しなくては間に合いません」
“しばらく様子を見よう”というのは絶対に駄目。躊躇なく119番にダイヤルすべきなのだ。

■最近注目のバイタルサイン

 ただ、本来は、発作が起こる前に対策を講じるべき。
 野口氏が強く勧めるのは、パルスオキシメーターでのチェックだ。

 パルスオキシメーターは医療機器のひとつで、指先や耳などにクリップのようなものを挟むことで、動脈血酸素飽和度(SpO2)を測定できる。肺から取り込まれた酸素は、赤血球中のヘモグロビンと結合して、動脈血として全身に運ばれる。SpO2は、その酸素と結びついているヘモグロビンの割合をパーセントで表したものだ。

 実は最近、SpO2が“第5のバイタルサイン”として注目を集めている。バイタルサインは脈拍、体温、血圧、呼吸数があり、人体の状態を示すサイン。そこにSpO2が加わったのだ。

「SpO2が低くなると、ヘモグロビンをたくさん運ばせようとして結果的に心臓に負担がかかります」
 つまり、低酸素血症から、心筋梗塞などを起こすリスクがあるのだ。

■心臓病のリスクを事前に察知

「次のうち1つでも該当する人は、身体活動に伴うリスクが高い。(1)医師から心臓に問題があると言われた(2)運動時に息切れがある(3)体を動かしていない時も動悸がする(4)立ちくらみやめまいがある(5)家族に原因不明の病気で突然死した人がいる(6)足腰に障害があると言われた(7)運動すると足腰の痛みが悪化する――です。自分の体を把握することが大事です」

 パルスオキシメーターは、家庭用の簡易型が複数のメーカーから販売されている。最近発売されたものはSpO2に加え、脈の乱れを発見できる脈波形などを調べられる。スマートフォンやタブレット端末に接続して測定することが可能で、より使い勝手がいい。

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