勢いづく70代 ED治療薬が「シニアの性」を一変させた

 先月末、茨城県つくば市で、環境事業を手広く営む社長夫妻(ともに70代)が、東京・下町の開業医を訪ねた。

 治療を受けに来たわけではない。つくば市から車を飛ばし、夫婦で手土産持参で治療のお礼を述べに来たのである。

 その半年前――。知人から紹介されたくだんの開業医が、ED(勃起不全)の治療薬を処方してくれた。
「効能が高い勃起不全の医薬品について、話には聞いていました。しかし、地元で名前が知られている私は、そんな悩みで病院に行くのはちょっと恥ずかしい。それで知人に相談し、東京にまで足を運びました」(社長)

 10年ほど前から寝室を別にしていた社長夫妻は、俗にいうセックスレス。夫婦間にも長くすきま風が吹いていた。ところが、「ED治療薬」の初回服用で、10年ぶりに“若さ”を取り戻す。色気も次第に消え失せ、いつも神経質そうな顔をしていた夫人。新婚時代のように寝室がひとつになると笑顔が戻り、主人に対する日頃の対応も優しくなったという。

 90代の年齢で、100メートルを30秒台で完走する元気な老人が増えている高齢化社会。年老いても健康なら、性欲という本能の発露はそう変わることがない。

 これまでもたびたび、老人ホーム入居者の闊達(かつたつ)な性問題に言及してきた。実際、高齢者の性欲について目を見張る実例を示してみよう。

■ホテル街を闊歩する高齢者と若い女性のカップル

 東京・JR池袋駅の東口、北口の歓楽街通りに、1時間2800円~といった格安なラブホテルが多く点在している。夜といわず、真っ昼間から、若い男女を追うように、おじいちゃんと孫のような若い娘のカップルが、玄関から堂々と入っていく。

 同じく、同地域で店を開いている寿司屋風居酒屋。とくに金曜日の夜などは、親子とは違う、孫娘とも思えない年の差激しい男女連れが、客の半数を占めることも珍しくはない。

 若い女性の登録者数がホテトル、デリヘルなど100人を超えるという池袋の風俗店経営者がこう言う。

「若い娘の供給は飽和状態だが、需要が少ないね。若い男たちは元気でも遊ぶ金を持っていない。ところがここ4、5年、“まだ立つの?”と思われる高齢者の客層がにわかに増えてきた。東京・吉原でソープランドを経営している私の知り合いも、お客に年寄りが多くなったと。これは、たぶん、ED治療薬の効果も影響していると思うよ」

 ただ、警察の目がうるさく、デリヘルなど風俗嬢が詰めている“待機部屋”ビルの周辺は、常にパトカーが巡回している。そのため、ホテルや独身男性の部屋に向かう風俗嬢に、「どんなに金を出されても、“本番”は絶対にやるなよ」(風俗店経営者)と、注意を呼び掛けているという。また、静岡市で、ホテルや自宅に来てくれるというデリヘルを経営しているオーナーA氏が目下、ひとつのプランを立てている。

 最近になって、客層に60代、70代の高齢者が急増していることがヒントになったというが、「一昔前まで、70代の客などはほとんどいなかった。しかし、ED治療薬の利用が常態化し、本能や機能も倍加する老人が増えてきた。老人の性欲に油を注いだ格好です。問題は警察ですが、なにか、ボランティア精神に近い立場で、老人たちの性処理ができるビジネスを起こせないかと模索しています」という。性産業は完全に高齢者がターゲットになっているのだ。