歯茎に優しく、歯周病予防 歯ブラシより「指磨き」のススメ

“最近、歯磨きをするとえずく”“歯茎に毛先が当たって痛いし、出血もする”“歯の詰め物が取れそう”

 年を重ねるにつれ、歯の健康の重要さはわかってくるが、若い頃のように歯ブラシで思いっ切り歯を磨くのに抵抗感を持つ中高年は少なくない。歯茎や歯の表面が弱ってくるからだ。ならば、歯ブラシを使わない歯磨きを試してはどうか? 例えば歯磨きティッシュ、歯の指磨きだ。

「歯茎を痛めず、歯をシッカリと磨ける。それを指で実感できるし、歯の指磨きはシニアにはぴったりの歯磨き法です」
 こう言うのは自由診療歯科医師で「八重洲歯科クリニック」の木村陽介院長だ。

 歯の指磨きとは聞き慣れないが、介護の現場では以前から行われている口腔ケア法だ。水を使わずふき取るだけの「歯磨きティッシュ」なる商品は昔からあるし、最近は一般向けに指サックの表面に歯ブラシがついた歯の指磨きグッズも市販されている。指が直接、歯や歯茎に触れるわけではないので、衛生的に問題はない。

 では指磨きにはどんなメリットがあるのか?
「年を重ねていくと、歯周病などで歯茎が腫れている人が少なくありません。そういう人の多くは歯が前後に倒れるなど歯並びがガタガタになっています。その状態で歯ブラシで磨くと、歯のくぼみにキチンと毛先が当たらず、磨き残しができやすいのです。それなら、指で歯の表面や歯と歯茎の間を感じながら丁寧に磨ける歯磨きティッシュや、指磨きを使う方が効果があります」(木村院長)

 磨けている歯や歯肉は指で触れると表面がキュッキュッと音がする。指磨きならそれを磨きながら実感できる。

 平成23年の厚生労働省歯科疾患実態調査によると、50代以上で歯周病にかかる人の割合は80%以上。指で歯と歯茎をマッサージするように磨くことは歯槽膿漏、歯肉炎の予防にもつながる。

「指磨きがいいのは中高年だけではありません。歯磨きを始めたばかりの子供たちにとってもいい訓練になります。子供たちは歯磨きを見よう見真似で行いますが、歯を磨くという実感が乏しく、正しく磨くことを覚えるのは難しい。しかし、母親が歯磨きティッシュや自分の指で子供の歯を指磨きしながら教えてあげると、歯を磨く感覚を学べます」(都内の別の歯科医師)

 ただし、歯磨きティッシュや指磨きだけで口腔ケアはOKというわけではない。歯の指磨きでは細かいところに磨き残しが出るからだ。

「意外に歯の奥でも、指磨きの方がよく届き、磨きやすい。しかし、歯と歯の間の食べかすやプラーク(歯垢)を取るため、デンタルフロスや歯間ブラシを使うことが大切です」(木村院長)

 歯の指磨きなら、電動歯ブラシのような歯肉を傷つける心配もない。あなたも、やってみれば?

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