「人工肛門」いらずの新治療に直腸がん手術の名医が異議

「排便機能はどうしても落ちます。排便回数が5~6回に増え、オムツやパッドが手放せないという人も少なくありません。術後10年、20年とたつにつれ、加齢による括約筋の衰えも加わります。垂れ流しとなる状態がひどくなり、常にオムツをつけなくてはならず、肛門周辺がただれて人工肛門にしなくてはならなくなったり、外出を控えるという結果になることもあります」

 そのままではISRが適応できない直腸がんに対し、まず放射線を当ててがんを縮小させ、その後、ISRを行い肛門を残すという方法を取り入れる医療機関も出てきている。しかし、それを先駆けて行っている欧米では、放射線によって肛門周辺の筋肉が硬くなり、肛門の収縮力が弱り、排便機能が著しく低下するという事例が報告されているという。

「人工肛門をつけると、患者さんの精神的な苦痛が大きいことは十分に承知しています。でも、人工肛門は次第に慣れることはできる。しかし、ISRで再発してしまったら、取り返しがつきません。がんを再発させないということが、がん治療の大前提ですから、患者さんがISRを希望されても、確実に適応できるという場合でなければ、私は行いません」

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