「キレイ好き」「こだわり派」…その性格は病気かもしれない

 外出するために自宅を出た後、玄関に鍵をかけたかどうか、電気を消したかどうか不安になり、わざわざ戻って確認する。テーブルの上にいくつも置いてあるリモコンが、決まった順序通りきっちり平行に並んでいないと落ち着かない。本棚の書籍は大きさや著者名が揃って収納されていないと気がすまない。壁に掛かっている額縁が少しでも曲がっていると直してしまう。電車の吊り革は不潔な気がしてつかめない。汚れが残っているような感じがして、何度も手を洗う……。

 心配性な性格、キレイ好き、几帳面なタイプに限らず、多くの人にこの手の経験があるのではないか。ほとんどの場合、単なる性格やクセといえるが、中には「強迫性障害」という心の病気の可能性もある。「部下をうつにしない上司の教科書」などの著者で、精神科医の奥田弘美氏は言う。

「ちょっとしたことが気になって強迫観念にとりつかれ、それを打ち消すための強迫行為を繰り返して他のことが手につかなくなる。こうした強迫性障害は、自分なりの厳格なルールを持っている、責任感が強い、完璧主義者といった“できる”タイプの人に多く見られます。普段はそれほどでもないのに、ストレスを受けた時に症状がエスカレートする人もいます」

 大事な試験やプレゼンが近づいてくると、コンビニに並ぶ商品を数える行為が止まらなくなったり、曲がって並んでいる商品をきちんと直さないと気がすまない。そのため、いつまでも店から出られないなんてケースもあったという。

 最近の健康ブームの影響から、汚染や病気に対する“強迫症状”がエスカレートして、ヘルシーな物しか食べられなくなるタイプも現れ始めた。

 体に悪いといわれる添加物が入っている食品は一切受け付けず、加工食品が食べられない。動物性食品も避けるようになって有機栽培された野菜しか食べられなくなり、栄養失調になってしまった人もいるという。

■強迫性障害との境目

 ここまでエスカレートすれば病気だが、添加物や産地などをチェックして、弊害がありそうな食品をなんとなく避けている人も少なくないだろう。「性格」と「病気」の分かれ目はどこにあるのか。

「症状の表れ方の程度が診断の基準になります。強迫による行為が1時間以上かかるなど、その人の仕事や日常生活に支障をきたすようになったら病気と考えてください。その行為が過剰だと自分で認識しているのにやめられなかったり、必要ない行為だと分かっていながら、不安や恐怖からしなくちゃいられないケースも該当します。本人はその行為を好きで行っているわけではないので精神的な苦痛を感じます。また、家族や周囲の人に迷惑がかかっているレベルなら注意が必要です」(奥田氏)

 重症だった場合、医者によるカウンセリングや薬物治療が必要になるが、イヤイヤでもないし、仕事や生活に支障もない程度なら気にしなくても問題ない。家族や同僚に迷惑がかかっていないか確認してみてもいい。

「精神的なストレスや疲労によってエスカレートする人もいるので、症状が気になり始めたらまずはしっかり睡眠をとって休養することです。また、あえて強迫行為をやめてみて、何も問題が起こらないことをゆっくり認識していく。〈吊り革に触って手を洗わなくても病気にならなかった〉〈戸締まりを確認しに行かなくても鍵はしっかりかかっていた〉といった事実を繰り返し学んでいくと、徐々に症状が改善する人もいます」(奥田氏)

 どうしても気になる人は、医者に相談したい。

関連記事