肝臓がん手術の権威が語る「医者は失敗から何を学ぶべきか」

■二度と間違えてはならない

 当時は「肝臓がんなら何でも来い」という気持ちで、数々の手術をこなしていました。そんな時、肝臓がんの男の子の手術を依頼されたのです。

 その男の子には3つの巨大な腫瘍があり、それらは切除が困難な場所にあった。

 大量出血の危険があると予想し、慎重に止血して肝臓にメスを入れたのですが、予想以上に血管内の圧力が高まっていた。メスを入れた途端、大量の血が噴き上がったんです。あぜんとしました。これはやばい、死んでしまうかもしれない。その場にいた別の教授が大動脈を遮断し、出血は収まり、幸いにも男の子の命は助かりましたが、この失敗で私が学んだのは、一度間違えたら二度と間違えてはいけない。そのために対策を講じなくてはならないということです。

 新しいことにチャレンジし続けないと、医療は進歩しません。そして手術はやればやるほど、難しくなっていく。すると、どうしてもリスクはつきまといます。

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