ここまで進んだ薬と治療法…「関節リウマチ」はもう怖くない

 本来は体を守る免疫細胞が、何らかの原因で自己を攻撃するようになるのが自己免疫疾患だ。そのひとつが、患者数70万~100万人といわれる関節リウマチ。手足の関節にこわばり、痛み、腫れなどが生じ、重症化すると関節が壊れ変形する。

 かつては有効な薬がなかったため、「手の打ちようのない病気」だった。ところが近年、関節リウマチを取り巻く環境はガラリと変わった。私たちが知っておくべきことを、関節リウマチの治療では国内トップレベルの東京女子医科大学膠原(こうげん)病リウマチ痛風センター・山中寿所長に聞いた。

 同センターの関節リウマチ患者は月延べ6000人。症状などが消え、治癒とほぼ変わらない状態になる「寛解」に至る患者は2000年には8%だったが、2013年には50%にまで急増した。主な理由は3つある。

「関節リウマチに非常によく効く抗リウマチ薬メトトレキサート(MTX)を早期から十分量使えるようになったこと、MTXだけでは進行を止めにくい場合には、さらに効果の高い生物学的製剤を使えるようになったこと、発症後10~20年先の予後を予測できるようになったこと、です」

 現在のMTX服用量の上限は、週8~16ミリグラム。欧米では20~25ミリグラムが上限だが、患者の平均体重が日本人54キロ、欧米70キロと差があるので、欧米並みの量は必要ないだろうと考えられている。

 予後予測が可能になったことは、関節リウマチ治療において非常に大きな意味がある。
「関節リウマチの患者さんは、予後が悪い人と悪くない人に分けられます。どういう人が予後が悪いか、それが予測できるようになったのです」
 予後が悪いと予測されるのは、(1)関節の炎症が強い(2)抗CCP抗体が陽性(血液検査で分かる)(3)初診時から関節の破壊が起こっている――のどれかに該当する人だ。

「こういった人には、早期からMTX、場合によっては生物学的製剤も加えた積極的な治療を行います。それによって、以前なら重症化していったような例が、寛解に至るようになったのです。つまり、こわばりや腫れ、痛みなどの症状が取れ、関節の破壊がストップし、変形を起こすことなく、健康な人とほとんど変わらない生活を送れるようになるのです」

 関節リウマチは早期治療が重要であることは以前から分かっていたが、有効な薬が登場し、必要な患者に狙いを定めて使えるようになったことで、治療成績が上がったのだ。

■経過観察のみでOKの場合も

 ここでポイントは、「予後が悪くないことが予想されるので、早期治療が必ずしも必要でない患者」もいることだ。

「前述の3つの条件に該当しなければ、経過観察のみでよい場合もあります。関節リウマチ=早期治療と思い込んでいらっしゃる方がいますが焦る必要はないのです」

 関節リウマチの典型的な症状は、「起床時の手や指のこわばりが1時間以上続く」「首、肩、手首や指、股関節、膝、足首などが痛んだり腫れたりする」など。しかし、これらは変形性関節症、膠原病など関節リウマチとは別の病気による関節炎でも見られる。
「関節リウマチか別の病気か見極めが難しい、という場合は、すぐに治療をせずに、経過観察をすることも大事なのです」

 MTXはいい薬だが、薬である以上、副作用のリスクもある。それを避けるのだ。
「関節リウマチはいまや恐れることのない病気になりました。ただし、それは経験のある医師の指導のもと、正しく付き合うことが前提なのです」
 好発年齢は30~50代の働き盛り。もしも、の時のために頭に入れておこう。

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