今すぐ必要かチェックを…老親の薬は「半分以下」に減らせる

 もし、自分の親が薬を大量に飲んでいるようなら、それらが本当に必要なものか、調べた方がいい。大幅に減らせるケースが少なくないからだ。「オアシス愛生クリニック」(埼玉・和光市)の伊藤彰洋院長に聞いた。

 アメリカでプライマリーケア(家庭医療学)を専門に学び、複数の医療機関で研修医にプライマリーケアの指導を行ってきた伊藤院長が開業したのは1年半前。大量に薬を服用する高齢者が来院するようになったきっかけは、彼らのケアマネジャーの紹介だったという。

 そんな高齢者のひとり、Tさん(84)は、14種類23錠もの薬を服用していた。
「Tさんは内科で高血圧治療薬、血液をサラサラにする薬、痛風薬、利尿薬など、消化器内科では複数の胃腸薬、便秘薬、整形外科では足腰のしびれや痛みのために鎮痛薬、ビタミン剤、漢方薬が処方されていました」

 伊藤院長はTさんの話を聞き、薬の種類をひとつひとつチェックした。
「まず、3種類服用していた高血圧治療薬は、Tさんの血圧の状態や年齢から考えて、1~2種類に減らしてもいいのではないか、と思いました。痛風薬は本来は痛風発作を起こしてから服用するもの。しかし、Tさんは尿酸値は高いですが、痛風発作をまだ起こしていませんでした」

 胃腸薬は、10年前に胃潰瘍の手術を受け、それ以来、定期的に検査に通っている消化器内科で継続して処方されていた。ところがTさんは、胃の不調は特に日頃感じていないという。しかも、内科、整形外科でも胃腸薬が処方されていた。

「Tさんの話と薬を照らし合わせ、『絶対に飲まなくてはならない薬』と『必要な時に飲んだ方がいい薬』とに分けたのです。胃腸薬がまさにそうでしたが、同じような成分が重なっている薬が結構ありました。それらをTさんにきちんと説明し、『まずはこれらを減らして、様子を見ましょうか』と話したのです」

 Tさん自身、14種類23錠の薬を飲むことにストレスを感じていた。飲み忘れも多かったという。伊藤院長の指導のもと、少しずつ薬を“交通整理”していった結果、現在、Tさんが服用している薬は、7種類16錠。症状が悪くなることもなく、逆に「今の方がいい」とTさんに感謝された。

「高齢者は複数の病気を抱えているので、かかっている診療科がいくつもあります。そのため、処方される薬の成分が重なっていることが少なくありません。おまけに医者は『検査をして数値が高めですから、念のために薬を』となりがち。それが何年も繰り返され、薬の量がどんどん増えていく高齢者が珍しくありません」

 本人が大量の薬をよしとしているならいいが、もしも「なんとか減らせないものか」と考えているようなら、医師に相談すべきだという。

「高血圧の薬などは、若い頃は複数種類必要でも、年を取ると減らして問題ないことが結構あります。胃腸薬、便秘薬、頭痛薬などのように、毎日必ず飲む薬でないものも。ビタミン剤や漢方薬は、飲むべき明らかな根拠があるかどうか。私の経験上、今飲んでいる薬の半分以下には減らせると思っています」

 アメリカでは、入院理由の上位に「薬の副作用」があるという報告もある。複数種類の薬をたくさん飲んでいれば、それだけ副作用のリスクも高まる。体のために飲んでいる薬が、逆効果を招くことだって、あるのだ。

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