まだまだ寒い。ベッドに入っても体が縮こまってなかなか寝付けなかったり、熟睡できないから、電気毛布や暖房をフル稼働させている中高年も多いのではないか。ぐっすり“冬眠”したいなら、すぐにやめたほうがいい。
■深部体温が下がらないと眠りが浅くなる
日照時間が短い冬は、夏に比べて睡眠時間が2時間ほど多くなる。しっかり眠ることができずにリズムが崩れてしまうと、他の季節の睡眠にも悪影響を及ぼすことになる。寒くても、深く良質な睡眠をとりたい。「ここぞというときに力が出せる 睡眠の3鉄則」などの著者で、作業療法士の菅原洋平氏に冬の睡眠のコツを詳しく聞いた。
人間は深部体温=内臓の温度が下がれば下がるほど眠くなり、睡眠が深くなる。逆に深部体温が上がれば目が覚める。入眠から睡眠中にかけては深部体温がどんどん下がり、起床に合わせて徐々に上がっていくようになれば、ぐっすり寝て、すっきり起きることができる。
「深部体温を下げるためには、汗をかいて放熱することが重要です。電気毛布のように体全体をずっと温め続ける寝具を使うと、汗をかいても蒸発しづらいので放熱することができなくなってしまいます。深部体温も下がらないため、眠りが浅くなってしまうのです。通常の布団は寝ている間にかいた汗を吸収して放熱しやすくしてくれます。しかし、電気毛布は機械的に温める機能を優先しているので、汗の吸収力も見劣りします。入眠時だけ電気毛布で温めて寝るようにしても、深部体温は下がりづらくなってしまいます」
寝具を温めるなら、寝る前に布団乾燥機を使うのがおすすめだ。これなら、寝具が冷えていくと同時に深部体温も下がっていく。汗も布団がしっかり吸収してくれる。
深部体温を下げるためには、部屋を暖房で暖めっぱなしにしたり、厚着をして寝るのもNGだ。
「人間は、冬は活動量が落ちて筋力も衰えます。寝返りするために使う背中の筋肉も衰えるので、寝返りの回数も減ってしまいます。寝返りをしないと、体と布団の間の空気を循環させることができないため、うまく放熱できずに体温調節がしっかり働かなくなります。ただでさえそうなのに、部屋全体を暖め続けたり、厚着をしていると、さらに深部体温が下がりづらくなるのです」
冬にぐっすり眠るためには、副交感神経を優位にする工夫も効果的だ。
人間が眠りに落ちる前は、リラックスした時に働く副交感神経が優位になる。しかし、冬は活発に動く時に働く交感神経が高まりやすく、入眠時も低下しにくい。そうなると、寝付きが悪くなってしまう。
「眠る前に副交感神経が高まる働きをサポートするには、尻の真ん中あたりにある『仙骨』を温めてください。仙骨には副交感神経が集まる副交感神経節があり、温めるとその働きを高めることができます。寝る前に湯たんぽやホットパックで仙骨を温め、寝る時は足元に移動させる。寝る時に足首を温めると足の裏から放熱して深部体温を下げることができるので、さらに効果が望めます」
起床1時間前に暖房がオンになるようにタイマーをセットしておく。起床時の深部体温上昇が助けられ、自然にすっきり目覚めることができる。これで、思う存分“冬眠”できる。