死因3位は肺炎…ワクチン1本5年効果でも普及率2割の壁

 がん、心血管障害に続く日本人の死因第3位は、肺炎だ。肺炎の95%は65歳以上の高齢者が占める。この肺炎を予防し、たとえ発症しても重症に至らないようにするのに役立つのが、肺炎球菌ワクチンだ。国立病院機構東京病院の永井英明外来診療部長に話を聞いた。

 肺炎を起こす菌は何種類もある。その中で最も多くを占め、重症化をきたしやすいのが肺炎球菌。肺炎球菌ワクチンは、その肺炎球菌による肺炎を予防するワクチンになる。

「肺炎の死亡率を見ると、65歳未満は低いですが、65歳以降では急激に高くなります。65歳を越えると、どんなに若く見えても、体力、抵抗力が落ちるからです」

 今の高齢者は、元気な人が多い。しかし、見かけの若さと、肺炎のかかりにくさや治りやすさは一致しないという。
「<あんなに元気だった人がまさか肺炎で…>というケースも見ています。だから、65歳以上の人には、ぜひ肺炎球菌ワクチンを打ってもらい、肺炎予防に努めてもらいたい。せっかく死因第3位の肺炎を予防できる手があるのに、利用しないのはもったいない」

 ところが、日本での肺炎球菌ワクチンの普及率は20%ほどと低い。国を挙げて積極的に肺炎球菌ワクチンを勧めているアメリカでは60%ほどなので、3分の1だ。

「日本では肺炎球菌ワクチンの認知度が低いこと、肺炎は抗生物質で治るという勘違いがあること、基本的に自費なので、8000円ほどの費用がかかることが普及率の低さの原因だと思います」

 今は、肺炎球菌ワクチンの公費助成を行っている自治体が多い。その内容は無料、一部補助など自治体によって違うので、自分が住む場所の自治体に問い合わせるといい。

 また、肺炎球菌ワクチンの重要性にようやく気付いた国が、肺炎球菌ワクチンを定期予防接種にすることを決め、今年中に実施される予定だ。

 65歳以上は必須の肺炎球菌ワクチンだが、その年齢に達しなくても打つべき人がいる。
「COPDなど慢性呼吸器疾患がある人、心疾患がある人、腎不全、慢性肝疾患、糖尿病、慢性髄液漏などの基礎疾患がある人です。特に呼吸器疾患と心疾患のある人は、その程度に限らず、65歳未満でも肺炎球菌ワクチンを打った方がいい。高齢者と同様に、発症すると重症化しやすいからです」

 ちなみに、アメリカでは喫煙者も肺炎球菌ワクチンの接種対象者の中に入っている。
 肺炎球菌ワクチンは1回の注射。一度打つと効果は5年持続する。

「肺炎球菌の23種類の型に対して免疫をつけるので、型によっては5年未満・以上ということがありますが、平均して5年。たとえば65歳で接種すれば、70歳で効果が減少するので、再接種となります」

 では、75歳で効果が切れた場合は?
「私は再々接種を勧めます。いくつかの論文では、再々接種でも抗体が上がることが示されています。また、大きな副作用も認められていません。アメリカでは、<再々接種が有効だというはっきりしたデータがない>という理由で再々接種を勧めていませんが、私は受けた方がいいと思います」

 肺炎球菌ワクチンの副反応としては、接種後の注射部分の腫れや痛み、赤みなどがある。ただし、通常は3日以内に治まる。

 65歳以上の身内に知らせよう。

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