花粉症の鼻水 確実に止めるなら「市販薬」より「処方薬」

 このところの大雪で忘れがちだが、東京では既に花粉症シーズンに突入している。周りにも鼻がグズグズして鼻水が止まらない、という人もいるはずだ。この厄介な鼻水、どうやったら止まるのか?

 鼻水はかみ続ければ止まるのでは? と思っている人もいるかもしれないが、これは誤解だ。
 そもそも鼻水は吸い込んだ空気に湿気を与えたり、異物を洗い流すために健康な人でも1日1~1.5リットル流れている。花粉症の人は、花粉シーズンになると普段の何倍も流れているという。

「鼻を強くかむなどすると、ジェット気流が耳の奥に送られ、急性中耳炎になったり、耳の奥の組織を壊したり、など危険です。鼻のツボを押したり、首筋を温めるなど、さまざまな方法を試す人もおられますが、鼻水を確実に止めるには薬しかありません」

 こう言うのは、耳鼻咽喉科の専門医で「慶友銀座クリニック」(東京・東銀座)の大場俊彦院長だ。

 花粉症で鼻水が出るのは花粉が鼻の中に入ってくると、肥満細胞と呼ばれる細胞からヒスタミンなどが放出され、神経や血管を刺激するからだ。

 むろん、花粉を吸い込まなければ鼻水は出ないが、これは無理。ならば街中で買える、市販薬で済ませればいいのか、といえばそうではない。

■市販薬を使い続けると薬剤性鼻炎になることも

「市販の点鼻薬には、血管収縮剤が含まれているものが多く、使い始めは花粉で腫れ上がった鼻の粘膜を収縮するので、鼻づまりを強力に解消します。しかし、1カ月以上連用すると、反対に鼻の粘膜がより腫れてきて、鼻づまりがひどくなります。それでも続けていくと中毒状態になってしまう。これを薬剤性鼻炎といいます。この系統の薬は街中の薬局だけでなく、ネット薬局でも買えます。薬剤師さんに問い合わせて買う慎重さが必要です」

 ならば、病院に行き、医師が出す処方薬をもらうのが確実だが、いきなり効き目の強い薬を服用するのは禁物だ。

「基本的に強い薬は眠気を誘うので避けた方がいい。高齢者は前立腺や緑内障に影響を与える可能性もありますし、鼻水は止まったが眠くて仕事に支障が出るのでは何のための鼻水止めかわかりません。“昨年効いた薬だから”といって、大量に処方してもらうのもやめた方がいい。体の中は日々変わっていて、いつまでもその薬が効くとは限らないからです」

 では、どんなやり方がいいのか?

「病院では必ず“昨年は何を飲んでいましたか?”と聞かれるはずです。それを基準にして患者さんの状態を見て強めの薬にするか弱めにするのか決めます。まずはそれを2週間程度使ってみることです。そうすることで、その時点で自分に合った薬が見つかるはずです」

 鼻水止めの薬を病院で初めて手にする人はどうすればいいのか?

「患者さんの状態、体調、花粉の飛散量にもよりますが、一般的には眠気のない薬から始め、それが効かなければ種類を変えて、処方していきます。たとえば、1日1回のロラタジン(一般名、商品名クラリチン)や1日2回のフェキソフェナジン(一般名、商品名アレグラ)が眠くなりにくい薬の代表選手です。ベポタスチン(一般名、商品名タリオン)、セチリジン塩酸塩(一般名、商品名ジルテック)、オロバタジン塩酸塩(一般名、商品名アレロック)なども第2世代抗ヒスタミン薬で眠気は市販薬よりも少ないとされています。それでも効き目がないようなら、ステロイドの入った点鼻薬を併用するか、ステロイドが配合されている内服剤のベタメタゾン・d―クロルフェニラミンマレイン酸塩錠(一般名、商品名セレスタミン)を使っていくことになります」

 花粉症の鼻水は長く放っておくと、慢性副鼻腔炎(蓄膿症)になることもある。確実に止めたいものだ。

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