痛くも恥ずかしくもない! カプセルで大腸がんチェック

 大腸がんは、全がんにおける死亡率が男性第3位、女性第1位だ。食生活の欧米化に伴い、大腸がんは増加している。

 これを検査するには、まず便潜血反応、次に大腸内視鏡。ところが、大腸内視鏡は肛門から内視鏡を突っ込む検査のため、「痛くて恥ずかしい」と嫌がる人が少なくない。便潜血反応で陽性が出ても、精密検査としての大腸内視鏡にきちんと進むのは55%というデータもある。

 ところが1月、痛くも恥ずかしくもない検査「大腸カプセル内視鏡」が保険適用になった。国立がん研究センター中央病院内視鏡科・角川康夫医長に話を聞いた。

 大腸カプセル内視鏡はその名の通り、カプセル型の内視鏡。31×11ミリのカプセルの“頭”と“お尻”にカメラが搭載されている。

「カプセルが肛門から出るまでだいたい4~5時間。この間、現在は病院で過ごしてもらっています。ゆくゆくは自宅に帰って好きに過ごしてもらえるように準備中です」

■感度は91%

 大腸はヒダが多いが、2つのカメラで死角も撮影できる。カプセルが速いスピードで進んでいる時は1秒間に35枚、ゆっくり進んでいる時は1秒間に4枚と、スピードに合わせて撮影枚数も自動的に調整される。

「カプセルが大腸の中を巡っている間は、バッグを肩から斜め掛けするように、データレコーダーを斜め掛けしてもらいます。カプセルが撮影した写真はレコーダーに送信され、専用コンピューターで解析し、ポリープの有無や大きさを調べます。大腸カプセル内視鏡の感度は84~91%です」

 検査の流れは「朝、病院で下剤を飲む→大腸カプセル内視鏡をのむ→下剤を飲む→カプセルが肛門から出るのを待つ」。カプセルが出るのが夕方以降なので、1日がかりの検査になる。検査前日は消化のいい食事を心掛ける程度で普段通りで構わない。検査当日はカプセルが出るまで絶食だ。

 従来の大腸内視鏡に比べると楽チンな検査だが、大腸カプセル内視鏡を受けた人が「これも改善されればなおいい」と口にすることがある。

「下剤の量です。大腸内視鏡でも必要ですが、それよりも多く飲まなくてはなりません。カプセルを飲む前に2リットル、カプセルを飲んでから1.8リットル。それ以上飲まないといけない方もいます」

 カプセルをのむ前の下剤は腸をきれいにするため、カプセルをのんだ後の下剤はカプセルを“後押し”するためだ。

「後押しの下剤を飲まないと、大腸カプセル内視鏡のバッテリー切れになり、大腸をくまなく調べられません」

 それでも、大腸カプセル内視鏡をいち早く臨床に取り入れた海外より、下剤の量は非常に少ない。海外では検査前日と当日の2日間絶食で、合計6リットルの下剤を飲む。最近は、日本の3.8リットルの下剤を見習い、少なくする傾向にあるという。

 大腸カプセル内視鏡できちんと理解しなくてはならない点がもうひとつある。
「ポリープの有無は調べられますが、切除はできません。もし、治療が必要と思われるポリープが見つかったら、必ず大腸内視鏡を受けなくてはなりません」

 残念ながら健康保険の対象になるのは、「大腸内視鏡を受けたけど、内視鏡が大腸の奥まで入らなかった人」。現段階では、「大腸内視鏡をやる前に大腸カプセル内視鏡」という人は自費になる(10万~11万円程度)。国立がん研究センター中央病院内視鏡科では、大腸カプセル内視鏡を無料で受けられる臨床研究を開始していた。

 大腸がん検診とは別に、大腸カプセル内視鏡の新たな役割として、潰瘍性大腸炎の患者の炎症の評価の手段としての研究もほかの医療機関で進められている。目が離せない検査法であることは確かだ。

 ちなみに、腸に狭窄(きようさく)がある人にはこの検査は向いていない。

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