今さら聞けない 「睡眠時無呼吸症候群」知っておきたいこと

 今月3日、高速バスが富山県のサービスエリアで、駐車中の大型トラック2台と相次いで衝突。死亡した37歳の運転手は、昨年の睡眠時無呼吸症候群の簡易検査で要経過観察を診断されていたが、年2回の健康診断では異常はなかったという。
 睡眠時無呼吸症候群という病気の深刻さを改めて浮き彫りにしたニュースだったが、どういう病気なのかきちんと分かっていない人も多い。睡眠時無呼吸症候群を中心に治療を行う「グッドスリープ・クリニック」の斎藤恒博院長に話を聞いた。

■どういう症状?

 基本的には「睡眠中のいびき」「睡眠中、呼吸がちょくちょく止まる」「日中の眠気」だ。ただし、分かりにくい睡眠時無呼吸症候群もある。
「必ずしも大いびきをかくわけではなく、寝息のようないびきもある。大いびきなら呼吸が止まっていることに家族が気付くかもしれませんが、寝息程度なら発見が難しいこともある」

 また、日中の眠気を睡眠時無呼吸症候群とすぐに結び付ける人は少ない。
「現代人で十分な睡眠時間を取れている人はそう多くはありませんから、たいていは寝不足だと考えるのではないでしょうか?」
 ただし、分かりにくいとはいえ、やはり、いびき、呼吸停止、日中の眠気がチェックのカギになることは確かだ。もしかしてと思ったら、専門医のもとで検査を受けた方がいい。

■肥満の病気?

 そうとは限らない。やせているのに睡眠時無呼吸という人は多い。
「上気道が閉塞することで起こる病気なので、扁桃(へんとう)の肥大、アデノイド、舌が大きい、鼻が曲がっているという人は肥満でなくても発症します。さらに日本人を含むアジア人はあごが小さく、気道がふさがれやすいので、やせの睡眠時無呼吸症候群が珍しくないのです」

■放置すると?

「今回のように、交通事故のリスクが非常に高くなる。ある実験では、飲酒で酩酊(めいてい)状態の人より重症の睡眠時無呼吸症候群の人の方が、車のハンドル操作ミスが多かったそうです。高血圧、心臓病、糖尿病、脳卒中などの生活習慣病を合併しやすいのも問題点。重症患者の4割が、これらの合併症で9年後に亡くなっているという報告もあります」

■どういう検査?

 確実に調べるには、睡眠時無呼吸症候群を数多く診ている医療機関で、睡眠中の脳波や呼吸などを測定する睡眠ポリソムノグラフィー検査を受けるべきだ。

「血中酸素濃度などで調べる簡易検査は、専門医が診れば睡眠時無呼吸症候群かどうかが分かる場合もありますが、それでも絶対ではありません。ましてや、睡眠を専門としない医師が診た場合、問題なしや要経過観察という判断が正しいかどうかは疑問です」

■治療は?

 機械から空気を送り込まれる専用マスクをつけて寝るCPAP療法がまず行われる。
 ここに、肥満の人はダイエットも加わる。扁桃が肥大化している、鼻が曲がっているといったはっきりした原因がある人は、それらを改善する手術も有効だ。

「ただし、CPAP療法は明らかに日中の体が楽になるが、睡眠中にマスクを付け続けるのは苦しいという患者さんもいます。そういう場合は、数週間つけて数週間休む、漢方薬などほかの治療法も併用するなど、患者さんに応じた方法を考えます」

 いずれにしろ、専門医のもとでの治療が肝心だ。睡眠時無呼吸症候群の患者数は600万人。20人に1人が該当するともいわれている。今回の事故は、決して他人事として考えてはいけない。

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