免疫力は下がり、肥満にも…「むくみ腸」の恐ろしさ

 まずは写真のリストをチェックしてもらいたい。A~Cのそれぞれの項目で1個以上、該当すると、「むくみ腸」かもしれない。

 日本で初めて便秘外来を開設した腸のスペシャリスト、順天堂医院総合診療科(便秘外来)の小林弘幸教授が言う。

「むくみ腸は私の造語で、むくんだ腸壁のことをいいます。男女問わず、むくみ腸に該当する人は非常に多く、それがさまざまな弊害を招いています」

 顔や足がむくむように、腸もむくむ。小林教授は便秘や下痢に悩む患者を何年も診る中で、そのことに気付いた。詳しく聞いてみた。

「大腸では、便に含まれている水分を粘膜・腸壁を通して吸収します。通常はその水分がスムーズに排出されるのですが、腸の血流が悪いと水分が流れず、粘膜や腸壁にたまってむくみを起こします」

■下剤の過剰服用は危険

 腸の血流障害の原因は、主に2つあるという。

「まずは、便秘です。便がたまると、腸に少なからず炎症が起きて血流が悪化します。レントゲン写真を撮ると一目瞭然。万年便秘の人は、腸の壁が厚くなるので白く写ります。これが腸壁のむくみです」

 だいたい3日以上便が出ない状態だと、血流障害を起こし始め、それが長期にわたるとむくみ腸が“定着”する。

 もうひとつの原因は、下剤だ。
「下剤は腸に刺激を与えて便を排出します。ところが、慢性的に過剰に服用すると、腸の粘膜が炎症を起こすので、その影響で血流が悪くなるのです。私の外来に来る患者さんはほぼ100%下剤を服用しており、従って、ほぼ100%むくみ腸になっています」

■過敏性腸症候群の原因にも

 むくみ腸は、腸が正常な働きを保っていないこととイコールだ。腸は免疫力と直結していることがさまざまな研究で明らかになっており、むくみ腸を放置することで、風邪やインフルエンザなどの感染症に弱くなり、さらに発症するとこじれやすくなる。また、過敏性腸症候群を引き起こしたり、慢性疲労、顔の吹き出物、代謝低下による肥満、体全体のむくみなどにもつながる。

 むくみ腸を改善するには、便秘改善が基本。腸内環境を整える食生活を心掛けることだ。日常的に、ヨーグルトや味噌、納豆、キムチなどの発酵食品、食物繊維を取る。
「ヨーグルトは、腸まで届く乳酸菌を配合されたものがおすすめです。夜、寝ている時に副交感神経が優位に立ち、腸の活動が高まるので、夜に食べるとよりいいです」

 糖質オフダイエットが流行しているが、これに限らず、極端な食生活は腸内環境を整える上ではよくないとのこと。

 運動も忘れてはいけない。腸内環境を整えるものとしては、腹圧を高めて血流をアップし、腸管を刺激する「セル・エクササイズ」を。
「腰を前後左右に回す。腸は固定されているので、腰を回すと、適度な刺激を加えられます」

 小林教授は、過去に虫垂炎で開腹手術を受けているため、どちらかというと腸は強くないそうだが、夜にヨーグルトを食べ、セル・エクササイズを日課にすることで、“快腸”を保っている。代謝もよく、53歳の今も、大学時代と同じ体重65キロをキープしているとのこと。

 むくみ腸とオサラバしよう。

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