よく効いて副作用も軽い…C型肝炎治療の“最強兵器”とは?

 肝臓がんの原因で最も多くを占めているのが、ウイルス性のC型肝炎だ。国内の推計感染者数は150万~200万人。慢性肝炎から肝硬変、そして肝臓がんへと進行する。このC型肝炎の新薬が昨年保険適用になり、治療成績がぐんと上がった。杏雲堂病院肝臓内科・小尾俊太郎部長にC型肝炎治療の最先端を聞いた。

「昨年認可されたシメプレビル(プロテアーゼ阻害剤)は、C型肝炎を引き起こすウイルスに直接作用して増殖を抑える薬です。これまで使われていたPEGインターフェロンとリバビリンの2剤に、シメプレビルを加えた3剤の併用治療が、現段階でのC型肝炎治療の“最強兵器”です」

 基本的に「シメプレビル1日1回+リバビリン1日2回+PEGインターフェロン1週間に1回」を12週続け、その後、「リバビリン1日1回+PEGインターフェロン1週間に1回」を12週の合計24週。従来のリバビリンとPEGインターフェロンの2剤併用が基本48週だったので、治療期間は半分に減った。

「C型肝炎ウイルス(1型高ウイルス量)の初回治療の場合、2剤併用の著効率は57%でしたが、3剤併用は89%と高くなりました。また、2剤併用でウイルスが一時消えたが、また出てきたいわゆる“再燃”に対する3剤併用による再治療の著効率は90%です」

 初めてC型肝炎のインターフェロン治療が登場した25年前、著効率はわずかに7%だった。ところが、今では89%(初回治療の場合)まで上昇。3年前に登場したテラプレビル(初代プロテアーゼ阻害剤)と比較しても、副作用が軽減されているのも特徴だ。

■値段は1錠で約10万円

 しかし、C型肝炎ウイルスに感染している患者すべてに、新薬を用いた3剤併用治療が適しているかというと、そうではないと小尾部長は言う。
「冒頭で3剤併用治療が現段階での最強兵器と言いましたが、実はもっと強力な薬が臨床試験中で、この数年のうちに認可される見込みなのです」

 2組ある。まず、「アスナプレビルとダクラタスビル」の組み合わせ。次に、「ソフォスブビルとレディパスビル」の組み合わせだ。3剤併用と何が違うか? まず、インターフェロンを使わない。そのため、副作用が格段に軽減される。

 次に、著効率が3剤併用に増して高い。
「特にソフォスブビルとレディパスビルでは、98%の著効率が得られています。しかも、耐性ができにくい薬だという点が非常に大きい」

 新薬シメプレビルは耐性ができやすい。そのためシメプレビルを用いた3剤併用で効果が見られなかった場合、ウイルスが耐性を獲得して、打つ手がなくなってしまう。

「初回や再燃の患者さんは90%近い著効率なのでまだいいですが、2剤併用で無効だった患者さんが3剤併用療法を行っても、著効率は50%という結果が出ています。2人に1人は効果がないばかりか、耐性の問題もあります。だから、発がんのリスク判定をして、治療が待てるのか否か判断すること。さらに3剤併用療法を行うとした場合、勝算がどれほどかを判断することが重要です」

 発がんのリスク判定は、肝炎の進行度で見る。肝炎の進行度は、肝臓の硬さからF1~F4の4段階に分けられ、数字が大きくなるほど肝炎が進行しているということで、F4は肝硬変だ。主治医とよく相談してリスク判定を行い、ベストの治療を受けるべきだ。

 小尾部長は、「臨床試験中のソフォスブビルとレディパスビルは、今後C型肝炎ウイルスを絶滅させられるほどの力を持ったスーパー最強兵器」だと言う。ただし、値段も“最強”。現時点で薬1錠1000ドル、約10万円。C型肝炎治療が進歩していることは絶対に間違いないが――。

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