病気になりたくなければ怒りを手放せ

脳をクールダウンさせる深呼吸 空気の流れを感じるのがコツ

 怒りは心臓に負担をかけ、長引けば、がんの発症も促す毒性の高い感情です。でも、ストレス過多の現代、聖人君子じゃない限り怒りはどうしても湧いてきます。

 大切なのは「怒ってはダメ」と無理に抑圧するより、「怒りは感じてもいいから速やかに手放そう」と切り替えること。その方が現実的です。

 怒りを手放すためには、まず怒りにのみ込まれるのを防ぐことが重要です。怒りは強烈な感情のため、カーッとなってのみ込まれてしまうと思わぬ失言や失態につながります。そのダメージを挽回するのは至難のワザです。

 最近の若者には怒鳴られただけでうつになる場合もあるので、パワハラ上司と認定されるリスクも大。そんな悪循環にハマると、怒りは容易に手放せなくなります。

 まず、怒りを感じたら大きく深呼吸しましょう。この深呼吸には、ちょっとしたコツがあります。息を鼻孔からゆっくりと吸い込んで、鼻の奥から気道を通って肺へと空気がスーッと流れていくのを「感じる」ことを心がけてください。

 そして、お腹を大きく膨らませて目いっぱい息を吸い込んだら、今度は「ふうっ」と口から息を吐き出します。吐き出す時も口腔から唇への空気の流れを「感じる」ことが重要です。

 こんなふうに「空気の流れを感じながら深呼吸する」のがポイント。怒りの対象に激しくとらわれてヒートアップしている脳を、「空気の流れを感じる」という体感覚に意識を移すことでクールダウンできます。

 怒っている時は交感神経が緊張して戦闘モードになっているのですが、ゆっくりと腹式の深呼吸を繰り返すことでその緊張を緩める効果もあります。

◇奥田弘美(おくだ・ひろみ) 精神科医。日本医師会指定産業医。山口大学医学部卒。都内20カ所の企業でビジネスパーソンの心身のケアを行いながら、「銀座スキンクリニック」ではコーチング・カウンセリングも行う。著書多数。5月には新著「女医が教える 働く男の怒りと疲れをパワーに変える処方箋」(メディカルトリビューン)を発売。

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