4カ月待ちエキスパートが伝授「肩こり8割解消」3ポイント

 肩こりは、マッサージや整体などで一時的に良くなっても、根本的な改善にはなかなかつながらない。徹底した対策はないものか? 「予約は4カ月待ち」という肩こり治療のエキスパート、東京女子医科大学東医療センター五十肩・肩こり外来の神戸克明准教授(整形外科)に聞いた。

 肩こりは、僧帽筋の過度な持続的収縮が原因だ。神戸准教授は重症の肩こり患者に、僧帽筋に局所麻酔剤を注射(トリガーポイント注射)し、一時的につらい痛みを取る治療を行っている。一方で、日常的な工夫で肩こりを改善することも十分に可能だという。
「肩こりを治すポイントは(1)腰(2)目(3)睡眠。これら3つに重点を置いて対策を講じれば、80%以上の回復が見込まれます」

 なぜ(1)~(3)なのか? 人間の頭は平均6~8キロ。これを、腰を中心に支えているわけだが、加齢とともに腹筋が弱くなると、背骨だけで頭を支えることになり、背骨が真っすぐになってストレートネックになる。背骨は首から腰までつながっているので、腰が弱くなると、僧帽筋にも負担がかかる。
「つまり、腰痛も起これば、肩こりも起こる。言い換えれば、腰の筋肉をしっかりと保ち、僧帽筋にかかる負担を軽減すれば、腰痛とともに肩こりも改善するのです」

「目」が肩こりと関係しているのは、それが人間の体ではカメラのレンズに相当するからだ。カメラの三脚に相当するのが僧帽筋であり、これが常に緊張して画像を安定させようとするために肩がこる。
「眼精疲労や視力低下で見えにくいと、よく見ようとして頭は前傾姿勢になります。すると僧帽筋の収縮が長時間続き、肩こりを引き起こします」

 睡眠は、(1)~(3)の中でも特に肩こりに与える影響が大きい。
「肩こりを慢性化しないためには、睡眠不足で筋肉が酸欠となり、二酸化炭素や乳酸などの老廃物を蓄積しないようにし、長時間の収縮による筋肉の損傷を翌日に持ち越さないこと。それには十分な睡眠が必要です」

 患者50人を対象に取ったアンケートでは、平均睡眠時間が6時間半以上であれば肩こりは半減し、6時間以下では急激に悪化するという結果が出た。また、8時間以上では、腰の筋力の低下を招き、かえって肩こりが悪化したという。

 (1)~(3)を踏まえた上で、神戸准教授が自宅でできる肩こり対策として勧めるのが、次のストレッチ体操と腹筋体操だ。

【ストレッチ体操】

 両手を後ろへ伸ばしてペンギンの羽のように、肩甲骨を寄せる運動を5回×3セット。
※手のしびれや首の痛みを感じる人は、頚椎(けいつい)椎間板ヘルニアの恐れがあるので、病院で検査を。

【腹筋体操】

 あおむけに寝て、膝を曲げる。両手を軽く膝の上にのせ、おへそをのぞき込むようにして10秒キープ。これを5セット。
「どちらも寝る前に行います。僧帽筋がやわらかくなって気持ち良くなるので、膝を曲げて、すぐに睡眠に入ってください。そのまま6時間半以上寝れば、翌日の肩こりの回復が期待できます」

 さらに、眼精疲労にならないように、パソコン作業を1~2時間続けたら目を休めて、遠くを見るなど工夫する。40歳以上になると、自覚しないうちに老眼が始まっていて、「見る力」が落ちていたり、睡眠時無呼吸症候群など別の疾患で、睡眠時間は取れていても質が低下していることがある。注意すべきだ。
「すべては無理でも、(1)~(3)のひとつでも改善できれば、それだけ肩こりは軽くなります」

 肩こりよ、さらばだ。

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