隠れ重大病も…4500万人が悩む「夜間頻尿」の症状と対策

ぐっすり眠りたい
ぐっすり眠りたい/(C)日刊ゲンダイ
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「夜間頻尿」は下部尿路症状(排尿や蓄尿にまつわる症状)の中で最も多く、40歳以上の男女4500万人が悩んでいるといわれている。夜間頻尿とオサラバするには、原因をはっきりさせて、対策を講じることだ。日本大学医学部泌尿器科学分野・高橋悟主任教授に聞いた。

 夜中に1回以上オシッコで起きるなら、夜間頻尿だ。
「もし夜間頻尿があるなら、【夜だけ頻尿】か、それとも【昼・夜ともに頻尿】かをチェックしてください。昼と夜合わせて1日8回以上の排尿が頻尿になります。昼だけなら、6~7回より多ければ頻尿です」

【夜だけ頻尿】

 考えられるのは、夜間多尿と睡眠障害だ。

★夜間多尿

 3つのことが関係している。
「まず、夜に尿が作られるのを抑える抗利尿ホルモンの分泌が加齢によって悪くなること。次に腎機能の低下で、1日あたりに作られる原尿(尿のもと)の99%が本来は体内に再吸収されるのに、それがスムーズに行われず、薄い尿がたくさん出るようになること。さらに、心不全で昼間、下肢にたまった水分が夜間、横になると心臓に戻り、尿として排出されることです。軽い心不全なら、夜間頻尿だけが最初の症状ということは珍しくありません」

 昼に利尿剤を服用して尿をたくさん出すようにし、腎機能低下、心不全の治療を行う。
 夜間多尿で高橋教授の外来を受診したAさんは夜6~8回の頻尿で、昼は500ミリリットルの尿量しかなかったが、夜は1000ミリリットルもあったという。

「心房細動による不整脈で心不全を起こしていたので、昼の利尿薬と不整脈の治療薬を処方すると、夜間多尿は治りました。適度な運動で昼の尿量を増やすことでよくなった人もいます」

★睡眠障害

「抑うつ状態や不眠症で眠りの質が悪いため、軽い尿意でも目が覚めてトイレに行きたくなるケースがあります。睡眠を専門に診る心療内科や精神科で、睡眠の質を上げる治療が必要になります。また、最近増えているのは、睡眠時無呼吸症候群(SAS)による夜間頻尿です」

 SASになると夜間の利尿ホルモンの分泌が高まる。呼吸が何度も止まるので右心房が必要以上に膨らみ、心臓が循環血液量が多いと判断して、水分を体外に排出しようと働くからだ。しかも、低酸素状態で腎臓が尿の再吸収をうまく行えない。結果的に、夜間頻尿になる。就寝中に気道に空気を送る機器・シーパップの利用などでSASが改善する。

■「夜だけ」か「昼・夜ともに」か

【昼・夜ともに頻尿】

 この場合、糖尿病か泌尿器疾患だ。

★糖尿病

「血糖値が高いと、浸透圧の関係から細胞の水分は血液中に取り込まれ、一方で尿細管では再吸収が行われていません。すると、細胞の水分がどんどん体外に排出され、体は脱水症状になります。喉が渇くので水分を多く取るようになり、ますます尿量が増えて頻尿になります」
 血糖コントロールがうまくいくようになるにつれ、頻尿もなくなる。

★泌尿器疾患

 前立腺肥大か、過活動膀胱だ。
「前立腺が肥大化すると残尿が増えて膀胱の容量が小さくなり、頻繁にトイレに行きたくなります。前立腺肥大の人の多くが併発している過活動膀胱も、膀胱の容量が小さくなっているため、通常はトイレに行きたいと感じない程度の尿量でも我慢できなくなります。2つの疾患ともいい薬が出ていて、前立腺肥大ならα1遮断薬や5α還元酵素阻害薬、過活動膀胱なら抗コリン薬やβ3作動薬が効果的です」

 快適な眠りを取り戻そう。

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