病気予防効果あり コーヒーで「体にいい」4つの成分

(C)日刊ゲンダイ
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 コーヒーは健康にいい──。このところ、コーヒーにはさまざまな病気を予防する効果があると盛んに報じられている。「がんになりたくなければ、ボケたくなければ、毎日コーヒーを飲みなさい。」(集英社)の著者で、東京薬科大名誉教授の岡希太郎氏に詳しく解説してもらった。

「かつてコーヒーは〈薬〉として使われていました。1日3~4杯のコーヒーは、3大疾病といわれるがん、心臓病、脳卒中のリスクを下げることがわかっています。また、2型糖尿病、認知症、パーキンソン病の予防にも効果的だという報告もあります。コーヒーがさまざまな病気を予防し、体にいいのは間違いありません」

 コーヒーに含まれている成分のうち、病気を予防する作用があるのは、(1)カフェイン(2)クロロゲン酸(ポリフェノールの一種)(3)ニコチン酸類(ビタミンB)(4)NMP(N―メチルピリジニウムイオン)─―の4つで、世界各国でさまざまな研究が行われている。

 国立がん研究センターの調査では、コーヒーをほとんど飲まない人に比べ、毎日飲む人は肝臓がんの発生率が約半分になり、毎日5杯以上飲む人は約4分の1に抑えられることがわかっている。

 他にも、口腔咽頭がん、前立腺がん、大腸がんなどのリスクを軽減させるという報告がある。

「ウィーン大学のソモザ博士は、がんを予防するコーヒー成分として、カフェインと併せて生豆に多く含まれるクロロゲン酸と焙煎豆に多いNMPが関与すると強調しています。3つの成分が相乗効果を表すというのです。最近では〈医者がなぜコーヒーを勧めないのか疑問だ〉と書かれた論文すら出てきました」

 コーヒーは脳卒中などの心血管系疾患の予防にも効果的だ。体がストレスを受けた時の血中脂肪酸の濃度を下げる働きがあるニコチン酸をはじめ、ピラジン酸やフラン酸などのニコチン酸類が血管の柔軟性と血液の凝固作用を改善し、動脈硬化を予防。血栓をつくりにくくする作用もある。

「コーヒーが2型糖尿病のリスクを下げるという研究も世界中で発表されています。カフェインが膵臓(すいぞう)細胞を保護するだけでなく、クロロゲン酸が糖分の吸収を抑えて食後血糖値を低く保ち、脂肪の燃焼を促進させるのです。コーヒーを8週間飲み続けると、インスリンの働きを高めて血糖値を安定させる働きがあるアディポネクチンの血中濃度が高くなるという報告もあります」

 さらに、1日に3~5杯のコーヒーを飲んでいる人は、飲まない人に比べて将来アルツハイマー型認知症になるリスクが最大62%低下するという。認知能力の低下を防ぐ成分が何なのかはまだはっきり分かっていないが、カフェインが短期的記憶力を向上させたり、計算速度を速めたり、作業時間を持続させることが分かっている。やはり、コーヒーは認知機能を活性化させるのだ。

■飲み過ぎは逆効果

 コーヒーに多くの病気を予防する効果があるのは間違いない。しかし、飲み過ぎは逆効果なので気をつけたい。

「コーヒーには体によくないとされる成分も含まれていて、6杯以上飲み続けると心血管系疾患の発症リスクが逆に高まったという調査もあります。私は1日1~3杯で十分と考えています。ただし、妊娠中の女性など、カフェインの過剰摂取を避けなければいけない人は注意が必要です」

 より効果的な飲み方もある。深煎り豆と浅煎り豆を1:1でブレンドし、ペーパードリップ式で入れる。お湯の温度は90度以下にして、蒸らし時間をしっかりとるためゆっくり抽出する。

「コーヒーの有効成分のうち、クロロゲン酸は熱に弱いので、浅煎りにとどめておかなくてはいけません。反対にニコチン酸とNMPは、トリゴネリンという成分に熱が加わって変化してできるものなので、深く煎る必要があります」

 インスタントや缶コーヒーに慣れている人もレギュラーコーヒーを飲むようにしたい。糖尿病が心配な人は、砂糖は避けてブラックにするのが基本だ。

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