喉が痛い…数時間で窒息死もある「急性喉頭蓋炎」の怖さ

ソバも喉を通らない/(C)日刊ゲンダイ
ソバも喉を通らない/(C)日刊ゲンダイ

「風邪の季節が終わったいま、喉が痛いのはたばこによるダメージか、声の出し過ぎ。あめ玉でもなめて安静にしていれば自然と治るさ」
 そう甘く見ている人は考えを改めた方がいい。喉の痛みの中には、数時間で喉をふさぎ死に至る病気もあるからだ。

 都内のスーパーに勤める江藤博文さん(仮名、51歳)が喉の異変に気づいたのは夕食時。食欲がなく、そばを食べようとしたが、痛くて喉を通らなかったという。

「声を出すのも大変でした。最初は、疲れのせいで風邪でもひいたのかな、と思いました。消費税アップに伴う駆け込み需要や値段表示変更で深夜まで本当に忙しく働いていましたからね。たばこを吸う量も増えていました」

 うがいをしたり、市販の風邪薬を飲んだが、一向に喉の痛みが消えず、近くの内科医院へ。喉を診てもらったが、扁桃も腫れておらず、「ゆっくり休みなさい」といわれ帰宅した。

 ところが、どうにも喉が痛くて我慢できない。改めて総合病院へ行ったところ「急性喉頭蓋炎」と診断され、即入院になった。

■気管と食道の分かれ目のフタが腫れ上がる

「喉頭蓋とは喉の奥にあり、空気の通り道である気管と食べ物の通り道である食道の分かれ目にあるフタのような部分。食べ物が気管に落ちない働きをしています。喉の奥が細菌感染して喉頭蓋に広がり、短時間で腫れ上がるのが急性喉頭蓋炎です」

 こういうのは慶応大医学部耳鼻咽喉科出身で、“声の専門医”として知られる、東京ボイスクリニックの楠山敏行院長だ。
 40~50代の男性患者が多く、免疫力が低下している場合に発症しやすい病気といわれている。
 この病気が怖いのは短時間で腫れ上がり、空気の通り道である気道をふさぎ、窒息死するケースがあることだ。
 治療はステロイドや抗菌剤の点滴が効果的だが、その効果が表れるより早く、気道がふさがることも少なくない。そのため、気管を切開するケースもあるという。
「実際、私が大学病院の救急にいた頃、男子中学生が運び込まれ、ご両親の許可を得て、その場で緊急気管切開をしたこともありました」(楠山院長)

 問題は、急性喉頭蓋炎は内視鏡などで喉の奥を調べない限り、口を開けただけでは判断できないこと。病院で診察してもらっても江藤さんのように口の中に異常が見つからず、「ただの風邪」と診断されるケースは多い。そのため適切な処置が施されないまま、症状が急変し、死亡することも少なくないという。
「そのため、医療訴訟になることも少なからずあります」(楠山院長)

 では、そうならないためにはどうすればいいのか? 
「食べ物や唾液を飲み込むと強い痛みがある、急にこもった声になる、息苦しいといった場合は耳鼻咽喉科で診てもらうことです。喉の奥を専用の器具で調べることができるからです。一般の方は喉の痛みということで風邪の延長である冬の病気のイメージがありますが、間違いです。季節性はなく、発熱や鼻水を伴わないケースもあります。糖尿病など免疫力が低下する持病のある人は、とくに注意しましょう」(楠山院長)

 疲れが出やすい中年男性は喉の痛みを侮ってはいけないのだ。

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