病気になりたくなければ怒りを手放せ

「イライラのもと」を探しだす

「怒り」という感情は、相手が自分の想定したように行動したり、反応しないときに湧いてきます。裏を返せば、相手に対して自分が期待している何かがあるということなのです。

 例えば「今日こそは商談をまとめてくるはずの部下が失敗した」「仕事で疲れ果てて帰宅した途端、妻の愚痴が始まった」……。こうした時の怒りやイライラは、すべて期待を裏切られた結果によって生まれます。その落胆や悲しみが怒りに変わっていくのです。

 怒りを手放すためには、まずはここに気づくことが大切です。「怒りとなって表れている根っこの気持ちは何なのか?」と「怒りのもと」を探し出すのです。

 前述した例だと「部下が期待に応えてくれずに落胆した」「妻が期待していたいたわりを示してくれず悲しかった」が「怒りのもと」です。そうした「怒りのもと」をしっかり認識することができれば、怒りが「悲しみ」や「落胆」といった別の感情にシフトしていきます。

 もちろん、これらの感情も決して気持ちがいいものではありませんが、怒りでイライラしたりキレたりするよりはずっとマシ。健康にも人間関係にもダメージが少なくなります。

 もし、相手に何か伝えたい時にも、「怒りの感情」をぶつけるのではなく、この「怒りのもとの感情」を伝えればいいのです。「契約が取れると期待していただけに残念だよ」「やっと家でくつろげると思って帰ってきたのに、君がイライラしていてつらいよ」といった感じです。

 人は相手から怒りの感情を向けられると、自己防衛するために態度を硬化させたり、攻撃的になったりします。怒りから別の感情にシフトさせてメッセージを伝えたほうが、相手もスッと受けとってくれるはずです。

▽奥田弘美(おくだ・ひろみ) 精神科医。日本医師会認定産業医。山口大学医学部卒。都内20カ所の企業でビジネスパーソンの心身のケアを行いながら、「銀座スキンクリニック」ではコーチング・カウンセリングも行う。著書多数。5月には新著「女医が教える 働く男の怒りと疲れをパワーに変える処方箋」(メディカルトリビューン)を発売。