病気になりたくなければ怒りを手放せ

カチンときたら口角を上げる

 これまで「怒り」という感情をより速やかに手放す方法を、あれこれ提案してきました。しかし、仕事の現場では、怒りやイライラを上手に処理する時間もないうちに、当該相手に物申さなければならないことも多々あります。

 そんな時こそ、いかにキレずに冷静なまま自分の意見や要望を伝えられるかが、デキる男としての度量の見せどころ。「あんな状況なのに、感情的にならないで物事を処理できるなんてさすがだな!」と、周りの評価も上がること間違いなしです。

 まず大きくひとつ深呼吸をしてから、意識して口角をグッと上げます。表情とは不思議なもので、「口角を上げるだけで感情もポジティブになる」という実験結果が報告されています。

 その効果のほどは人それぞれだとしても、口角を上げながら怒鳴ったり激しい言葉を投げつけたりするのは、かなり難しいことです。多少、表情が引きつってもいいので、口角をグッと上げながら話し始めてみてください。それだけで、一触即発の危険が低くなります。

 さらに、相手に気持ちを伝える際は「私」を主語にしましょう。例えば、「なんで君は報告がいつも遅いんだ」「あなたたちの要求は無理だ」というのは、主語が「あなた」や「あなたたちの仕事」であり、「私」ではありません。そのため、断定や評価のニュアンスが入ってきてキツい印象になります。

「私は君の報告がいつも遅いので困っているんだ」「私にはあなたたちの要求は無理だと感じるので(私は)悩んでいる」と、「私」を主語にしてみてください。評価や断定ではなく、「私が感じる」「私は思う」という伝え方になり、同じことでもマイルドに聞こえます。ぜひ試してみてください。

▽奥田弘美(おくだ・ひろみ) 精神科医。日本医師会認定産業医。山口大学医学部卒。都内20カ所の企業でビジネスパーソンの心身のケアを行いながら、「銀座スキンクリニック」ではコーチング・カウンセリングも行う。著書多数。5月16日には新著「女医が教える 働く男の怒りと疲れをパワーに変える処方箋」(メディカルトリビューン)を発売。