細菌性食中毒の年間患者数の7割は、6~9月に報告されている。体内に入る菌の数が多くなるほど、食中毒のリスクは増すが、専門家によれば、普段何げなく行っていることが食中毒リスクを高めているという。
■水抜き後の食卓でも落としたキュウリに740個の菌が付着
衛生微生物研究センターの李憲俊所長らが行った実験で、驚きの結果が出た。
食卓を拭く台布巾をよく水洗いした後、どれくらいの雑菌が付着しているか調べたところ、その数、180個! それを台所のシンク脇などで干すと、6時間後には61倍の1万1000個にまで増殖した。
「シンク脇は、菌が好む高温多湿の環境です。時間の経過とともに菌は急速に増殖していき、8時間後では333倍、12時間後では722倍になり、13万個の菌が台布巾1枚に付着するようになっていたのです」(李所長)
さらに李所長らは、水洗いと室内干しを朝夕6日間繰り返した台布巾で、消毒をした清潔な食卓を水拭きした時、どれくらい雑菌が食卓に付くかを調べた。
「すると、10平方センチにつき7万6000個の菌が付着していました。この食卓に食べ物を落とすと、たとえばキュウリのスライスは740個、厚焼き卵は458個、ハムは402個と、平均411個の菌が付着することも分かりました」(李所長)
主婦224人対象のアンケート調査(薬用せっけん「ミューズ」実施)では、8割以上の主婦が台所での手洗いをハンドソープを使わずに、10秒以内で済ませていた。
それを受けて、「ミューズ」が10秒以内の手洗いで作ったおにぎりの菌の数を調べると、握った直後はおにぎり1個当たり500個の菌が、常温25度で3時間放置後には110万個に……。
一方、衛生管理の専門家の指導に従い洗った手によるおにぎりは、直後は20個、3時間後でも1800個。「10秒以内洗い」と比較すると、611倍の差がついた。
食中毒は時に命にかかわる。免疫力の低い子供や高齢者と同居していれば、なおさら注意が必要だ。どう対策を講じればいいのか?
「台布巾は使用後、漂白、天日干しをする。毎日漂白するのが面倒なら、台布巾を乾かした後、アルコール除菌剤をスプレーするといい。ティッシュやキッチンペーパーにアルコール除菌剤をスプレーして台布巾代わりに使うと、より手軽で簡単です」(李所長)
■手洗いは最低でも30秒
衛生管理の世界基準「HACCP」のコーディネーターである若宮寿子氏(料理研究家)は、手洗い法を次のように指導する。
「水や湯では菌は落ちません。ハンドソープをよく泡立て、手のひらのシワ、指先、爪、指の間、親指や手首などの洗い残しやすい場所を意識しながら、最低でも30秒はかけて洗いましょう」
“ノータッチ手洗い”も心掛けたい。
「できるだけ汚れた場所を触らない手洗いです。タオルには菌や汚れが付いている可能性があるので、キッチンペーパーなど使い捨てのもので手を拭きます。手洗い用のせっけんも、直接せっけんやボトルを触らなくてよい自動で泡が出るタイプのものを使うと衛生的です。手洗い後は、キッチンペーパーなどを使って蛇口の栓を閉めるといいです」(若宮氏)
自分で実践するのはもちろん、妻や子供にも徹底させよう。