前立腺がん告白の角盈男さんが行う「重粒子線治療」って?

元巨人の抑えのエース/(C)日刊ゲンダイ
元巨人の抑えのエース/(C)日刊ゲンダイ

 プロ野球の元巨人の抑えの切り札・角盈男氏(57)が、テレビ番組で前立腺がんを患っていることを告白、話題になった。今年2月、長年やっていなかった健康診断を受診、全身に転移してもおかしくない状態でがんが発見されたそうだ。

 前立腺がんには、手術、放射線、ホルモンなどの治療法がある。角氏はホルモン療法でがんの増殖を抑えつつ、秋から放射線療法のひとつである「重粒子線治療」を行うという。一体どんな治療なのか?

「混合診療が認められている先進医療のひとつで、日本国内では放射線医学総合研究所(千葉県)、群馬大学、兵庫県立粒子線医療センター、九州重粒子線がん治療センター(佐賀)の4カ所で行われています。重粒子(炭素イオン)を光の速度の70%まで加速させ、体の奥にあるがんを攻撃する治療法です」(都内の放射線治療専門医)

■前立腺がんにはさまざまな治療法が登場

 エックス線を使った、従来の放射線治療では体の奥に行けば行くほど、がんに与える衝撃が下がるが、重粒子線はそれがない。しかも、粒子が重いため、生物的破壊力が強い、といわれている。

「ただし、前立腺がん治療に本当に重粒子線治療が必要か? といわれるとなんとも言えません。実は前立腺がんは急激に患者数を増やしている分野。『ダヴィンチ』と呼ばれるロボットを使った手術や、放射線源を埋め込み、内部から治療する小線源療法、重粒子より軽いが電子より重い陽子線治療など、さまざまな治療法が登場。それぞれ得意とする医師が“オレのやり方が一番いい”と力説していて、専門家といえども何がいいのか、断言できないのです」(前出の放射線治療専門医)

 実際、専用コンピューターとエックス線を使う「強度変調放射線治療」(IMRT)と呼ばれる放射線療法は10年以上前から普及しているが、重粒子線治療と結果に大きな差はない、ともいわれている。

「子供相手に横綱が相撲を取るようなもので、大げさ過ぎます。ピンポイントで照射することで重要臓器を損なわないといいますが、それは重粒子線でなくてもできる。むしろ、巨額な費用を使って作ったからどんどん使おうという部分もある」(都内の泌尿器科医師)

 重粒子線治療の費用は照射だけでおよそ300万円。他に保険適用される入院費用や薬代、診察料などがかかる。プロ野球選手として20億円稼いだといわれる角氏にすれば、安いかもしれないが、普通の人にはなかなか手が出ない治療だ。

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