「成人喘息」の誤解 服薬をやめられる人は2割しかいない

治ったと勘違い/(C)日刊ゲンダイ
治ったと勘違い/(C)日刊ゲンダイ

 喘息(ぜんそく)に対して誤った認識を持っている人がまだまだ多い。そのために、何度も発作を繰り返している人がいる。喘息治療の第一人者である国際医療福祉大学臨床医学研究センター・足立満教授に聞いた。

 喘息のコントロール状態を調べる「ACT」というテストがある。25点満点で、19点以下が「コントロール不良」だ。
 足立教授が喘息患者を対象に調べたところ、ACTの結果は「コントロール不良」なのに、本人は「コントロール良好」「まぁまぁコントロール」と考えていた人が74%もいたという。

「本人の自覚と、実際の状態とでは大きな開きがあるのです」

 これは、ほかの研究でも同様の結果になっている。ガイドラインの治療目標は「健康な人と変わらない日常生活を送れること」だが、目標達成率の現状は、「1カ月以内に喘息症状がなかった」と答えた人は、わずか38%。「社会生活上の諸活動に支障がなかった」という人は40%だった。

 喘息治療は、格段に進歩している。かつては発作時に飲む治療薬しかなかったが、気道の炎症を抑え、発作を起こさないようにする予防薬が登場。今は「正しく治療を受けていれば、喘息発作を起こさないで社会生活を送れる」時代だ。しかし実態は、社会生活に支障を来すほどの喘息症状が出る人が60%もいる。

■「治った」という誤解

 問題点は、2つある。
 まず、薬を継続的に使わない人が圧倒的に多いことだ。

「高血圧や糖尿病などの慢性疾患は、数値目標があり、『発症したら一生薬を飲まなくてはならない』という認識が浸透している。本来は喘息も高血圧や糖尿病と同じ慢性疾患なのですが、そう考えられていない」

 喘息の場合、激しい発作や咳(せき)などで病院にかかる。薬で症状が鎮まると、ほとんどの患者が「治った」と思う。ここに落とし穴がある。

「薬で症状が鎮まっただけで、治ってはいません。そこで薬をやめれば、風邪や疲労などちょっとしたことをきっかけに、喘息発作を起こす可能性がある。喘息は、ごく軽症と咳喘息を除き、半永久的に治療を続けなくてはならない慢性疾患です。それを認識しなくてはならない」

 ある調査では、「成人喘息患者で治療をやめられるのは2割、8割は治療の継続が必要」という結果が出ている。
 薬を途中でやめてしまう人が多いのは、喘息治療で使われる「吸入ステロイド薬」に対して、誤解していることも挙げられる。

「吸入ステロイド薬は局所的な作用で、肝臓ですぐに壊されます。全身に作用を及ぼす飲み薬と比較すると、ステロイドの量も約100分の1とごく少量。安全性はきちんと確認されていて、小児でも使えるほどです」

 もうひとつの問題点は、薬の使い方を間違えている人が少なくないことだ。
「吸入ステロイド薬や、β刺激薬との合剤は、正しい使い方をしないと効果を発揮しません。何度も喘息症状を繰り返すという人に、目の前で吸入薬を使ってもらうと、正しい吸入法とは全く違う方法で使っていたというケースもよくあります」

 喘息は、かつては年間6000~7000人が死亡する重大病だった。今の死亡者数は、年間2000人以下だ。

「医師の指導なしに薬をやめること、自己流の薬の使い方をすること。この2つを改めれば、喘息で苦しむ人はもっともっと減るはずです」


▼成人でも発症
 喘息は、成人でも発症する。成人の喘息は、小児の喘息より一生付き合っていかなければならないケースが多い。

関連記事