5歳を過ぎても、週2回以上のオネショが3カ月以上続く場合、「夜尿症」と診断される。患者数は80万人といわれているが、近年、その数が増加傾向にあるという指摘もある。自分の子供がそうなら――。
「夜尿症がきっかけで、いじめを受けるようになるケースがあります」と言うのは、兵庫医科大学小児科学講座・服部益治教授だ。
小学1年生で10人に1人いるといわれている夜尿症は、その10~20%が成長に伴い、自然に治る。
しかし、小学5~6年生になっても治らない子供がいる。小学5年生で20人に1人が夜尿症だとみられている。
「この頃、学校では林間学校や修学旅行といった集団宿泊学習があります。そこでオネショをしてしまい、友達にからかわれ、深い傷として残る。夜尿症の8割は適切な治療によって数カ月から1年で治りますし、親への生活指導だけで治る子供も20~30%います。ご両親が重要視していない場合もあります。しかし、“されど夜尿症”と考え、早めの対策を講じるべきなのです」
夜尿症の原因は2つだ。まず、夜間に分泌される抗利尿ホルモンの分泌が不十分ということ。抗利尿ホルモンは、夜間に尿がたくさん作られないようにするものだ。
次に、膀胱(ぼうこう)の大きさが通常より小さく、尿をためられないということ。
「遺伝的な要素も大きく、両親のどちらかが夜尿症の場合、子供の3人に1人が夜尿症といわれています」
原因は、尿検査で分かる。抗利尿ホルモンの分泌が少なければ、抗利尿ホルモンを薬で補う。効果がイマイチなら、抗うつ薬をプラスすることもある。
膀胱の大きさが問題なら、アラーム療法(オネショをした途端、睡眠から目覚めさせる行動療法)や膀胱の緊張を取って弾力性を持たせる抗コリン薬で対応する。
■対策3原則
しかし、夜尿症で最も重要なのは、「親の子供に対する態度」だ。
「三原則は〈起こさない〉〈怒らない〉〈焦らない〉。夜中に起こしすぎると、睡眠のリズムが乱れ、抗利尿ホルモンの分泌量が減ります。すると寝ている間の尿の量が増えて、オネショを起こしやすくなる。親が怒ったりイライラしたりしていると、それが子供に伝わり、ストレスが強くなってオネショが長引くことになりかねません」
オネショを怒るのではなくて、オネショしなかったことを褒めることだ。
生活指導も必要だ。
「夕食時以降は水分や塩分を控える。寝る前にトイレに行く。昼間、〈トイレ行った?〉と子供に言い過ぎない。親にトイレに行くことを促されて、尿をためる習慣がなくなることも…」
パソコンの普及で、夜中までインターネットをしている子供が増えた。さらに今問題なのは、スマートフォンだ。深夜まで延々とネットやゲームをする子供が急増している。
「パソコンやスマートフォンからは強い光が出ている。これによって、夜なのに体がそうと認識せず、昼と同じ状態になっていて、抗利尿ホルモンの分泌が悪くなり、オネショを繰り返すようになるのです。こういった環境型の夜尿症が今後も増えていくと思います」
服部教授が指導した夜尿症の患者には、夜9時以降はスマホ、パソコン、テレビなどを見ないようにしただけで、安眠できるようになり、夜尿症が改善された人もいる。
夜尿症の中には、まれとはいえ、20代、30代になっても夜尿症を引きずっている人が…。たかがオネショと軽視したり放置したりせず、悩み続けないで医療機関に相談するべきだ。