下痢、便秘、汗っかき… あなたの体調不良は糖尿病が原因だ

/(C)日刊ゲンダイ
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 夏は糖尿病を発症、症状が進行しやすい季節だ。暑さから体を動かさず、昼間は炭酸飲料などをがぶ飲み、寝苦しい夜は飲酒で過ごすことが多いからだ。問題は糖尿病の合併症である神経障害の症状を知らないばかりに糖尿病を放置し、重症化させている人がいること。あなたは大丈夫?

 商事会社に勤める吉田孝さん(仮名、42歳)は昨年夏、今までにない体調の変化に気づいた。

 急に立ち上がるとめまいがする、お腹が渋り下痢が続く、食事のたびに大汗をかく――などだ。

「冷たいものばかり食べたり飲んだりしていたので、めまいは貧血、下痢はお腹が冷えたせい、と軽く考えていました」(吉田さん)

 ところが誕生月である8月に受けた会社の健康診断で、1~2カ月の平均的血糖値を示すヘモグロビンA1c値が7・6%(6・5%以上は糖尿病)に。治療のため紹介された糖尿病専門医からは「症状は糖尿病による神経障害かもしれません」と告げられたという。糖尿病専門医で「しんクリニック」(東京・蒲田)の辛浩基院長が言う。

「糖尿病性の神経障害は網膜症、腎症と並び、糖尿病の3大合併症といわれ、多くの糖尿病の患者さんが経験する症状です。合併症の中で最も早く出て、早い人で発症から2~3年で顕著にあらわれます。しかし、そもそも自身が糖尿病だと知らず、その症状が糖尿病の合併症だと気がついていない人が大勢いるのです」

 では、糖尿病性神経障害とは具体的にどんな症状を招くのか?

 代表的なものに手足のしびれがある。とくに足の裏がじんじんして、砂利の上を素足で歩くような異常知覚を感じるという。

「糖尿病性の神経障害は手足の片方に出るということはなく、両方に出るという特徴があります。しびれ以外には、筋肉の萎縮による下肢のこむら返りや足のつりなどがあります」(辛院長)

 下痢や便秘といった胃腸の不調も糖尿病性神経障害の典型的な症状だ。

「糖尿病による下痢は便秘と下痢が交互に起こり、腹痛を伴わないことが多い。便秘は自律神経障害に伴う腸管の蠕動運動の低下による結果です。また、自律神経の異常で胃の蠕動が弱まり、胃内に食物が停滞。小腸に食物の流入が遅れて吸収速度が一定せず、突然血糖値が乱れることがあります」(別の糖尿病専門医)

 意外に思われるだろうが、糖尿病の人は立ちくらみもひどくなる。

「健康な人は寝ているときと起きたときの全身の血圧差が出ないように自律神経が制御しています。ところが、糖尿病の人がいきなり立ち上がると、それが機能せず、脳の血圧が一気に下がり、立ちくらみが起きるのです」(辛院長)

 食事のたびに汗をかくという人も糖尿病性神経障害を疑った方がいい。

「食事中に汗をかくのは、味覚性発汗といい、通常は辛いものを食べたときに汗が出ますが、甘いものや酸っぱいものでかく人もいます。ただ、毎食、汗をかくというのは神経障害が起きている可能性があります。逆に、暑いのに汗をかかなくなったという人もいます。汗が出ずに皮膚が乾燥することで、かゆみが出ることもあります」(辛院長)

 男性の場合、“夜の営みが弱くなった”という人も気をつけた方がいい。

「一番怖いのは自律神経障害が進むと狭心症による胸の痛みを感じなくなることです。これを放置すると痛みのない心筋梗塞を起こし、突然死することにもなりかねません」(辛院長)

 思い当たる人は病院で血糖値を測ることだ。