症状ないが危険の一歩前 「前脱水」対策が熱中症回避のカギ

前脱水だと感じたら経口補水液を/(C)日刊ゲンダイ
前脱水だと感じたら経口補水液を/(C)日刊ゲンダイ

 30度を超える真夏日が続いている。総務省消防庁によれば、今月7日から13日までの1週間に熱中症で救急搬送された人は2357人で、このうち死亡者は少なくとも4人。また、病院に搬送された時すでに3週間以上の入院が必要だった人は44人だった。これら熱中症の人の半数を占めるのは高齢者だ。

 老親に熱中症対策の重要性を今すぐ説くべき。今年注目を集めているのは、「前脱水」だ。

 熱中症の症状は、めまい、大量の発汗、立ちくらみなどが最初に表れる。主な原因は、発汗による体液量減少、つまり脱水症だ。

 症状に気がつけば、すぐに涼しい場所で体を冷やし、適切な水分と塩分の補給を行わなくてはならない。対処が遅れれば、中枢神経症状、肝・腎機能障害、血液凝固異常が起こり、最悪の場合、死に至る。

 しかし、高齢者の場合、体内の水分量がもともと少ないので、短時間に発汗して水分を失い、すぐに脱水症になる危険性がある。さらに、温度感受性や暑さへの耐性の低下、のどの渇きを感じにくいということが拍車をかける。そこで「前脱水」の段階で手を打ちたい。

 前脱水は、脱水症の前段階のことだ。

「脱水症のような症状がないけれど、体液量が減少している状態を指します。脱水症では体液の3%以上が失われるので症状が出やすいですが、前脱水は体液量が減ったといっても1~2%程度で、症状が出にくい。いわば脱水症と正常の境界域なので気がつきにくいのです。しかし、これは脱水症を発症する直前の体の警告だと考えた方がいいのです」(神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部栄養学科・谷口英喜教授)

 前脱水のチェック項目は、高齢者、成人、幼児・小児で違う。

「成人は自分で体調管理ができるのでいいのですが、高齢者や幼児・小児は自覚症状がありません。周囲がチェックするようにしてください」

 前脱水だと感じたら、体内で不足している水分と電解質を効率よく補える経口補水液を飲む。経口補水液は市販されているが、自分でも作れる。1リットルの水に3グラムの食塩と40グラムの砂糖を入れればOKだ。柑橘系の果汁を入れると飲みやすくなる。

「健康な時は水やお茶で水分補給をしても問題ありませんが、前脱水の時は体内で水と電解質が同時に減少しているので、ここに水分だけを補給すると、体液が薄まります。すると、体液の濃さを元に戻そうと体が働き、飲んだ水が尿として排出され、かえって脱水症が進行します」

 チェック項目は家族のだれもが目につく場所に張っておくべし。ただし、すでに「ぐったりしている」「受け答えがはっきりしない」といった場合は、すぐに119番へ!

▽前脱水のチェック項目

★高齢者用
トイレの回数が減る。便秘気味
食欲が低下
元気がない
昼間寝てばかり
暑いのに汗をかかない

★成人用
夏バテだと感じる
頻繁に喉が渇く
尿の色が濃い黄色
口の中や周りが乾く
二日酔い症状がある

★幼児・小児用
泣いても涙が出ない
暑いのに汗をかいていない
おむつ替えが少ない。便が硬い
原因不明の微熱
なんとなく不機嫌

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