【健康特集】認知症予防の期待が高まる「緑茶カテキン」

 ユネスコの無形文化遺産に和食が登録され、海外での日本の食文化に対する注目が以前にも増して集まる中、緑茶の人気もますます高くなっている。飲んでおいしい緑茶にはそれだけではなく、「緑茶カテキン」をはじめ、健康に役立つさまざまな機能性成分が含まれていることが分かっているが、最近は特に抗認知症効果に期待が寄せられているという。

身近な緑茶に認知機能改善の可能性

 厚生労働省研究班の推計によれば、2012年時点での認知症患者は約462万人、認知症予備軍とされる軽度認知障害の人も約400万人いるとされ、それを加えれば65歳以上の4人に1人が該当するという。しかも今後、高齢化が急速に進むと患者数はさらに増えるというから事態は深刻だ。
 こうした中、静岡県立大学薬学部の山田浩教授、伊藤園中央研究所、社会福祉法人・白十字ホームの共同研究によって、緑茶に含まれる緑茶カテキンが認知症の改善に期待できることが明らかにされている。
 研究ではミニメンタルステート検査(世界標準で用いられている認知症の診断のための検査。30点満点で23点以下は認知症、24~27点は軽度認知機能障害が疑われる)で27点以下の高齢者12人に緑茶1日2gを3カ月間飲用してもらったところ、ミニメンタルステート検査の平均点数が15.3点から17.0点に有意に上昇。12人中8人に認知機能の改善が認められ、中でも特に近時記憶を評価する項目で顕著な傾向にあったという。この結果について山田教授はこう語る。
「近時記憶の低下が認知症の初期症状であることを考慮すると、緑茶の摂取により認知症の進行が抑制されることが予想されます。今回の研究で使用された緑茶の1日摂取量は高齢者でも日常的に摂取できる程度の量ですし、また、東北大と金沢大の疫学調査から緑茶を習慣的に飲用することで認知機能の低下リスクを抑えられる可能性も報告されています。こうしたことを踏まえると、短期間に緑茶を大量に飲んで一気に緑茶カテキンを摂るのではなく、毎日こまめに緑茶を飲んで、より効率よく緑茶カテキンを摂ることで認知機能の改善効果を得られる可能性が期待できます」
 伊藤園中央研究所の提坂裕子所長によると、緑茶の飲用が加齢による認知機能の低下を抑制するかもしれないことを最初にヒトで示したのは06年、東北大(当時)の栗山先生らが発表した調査研究結果とのこと。仙台市のある地域の住民1178人を対象に、アンケート調査と認知機能テストを行ったところ、緑茶を1日2杯以上飲む人は1週間で3杯以下しか飲まない人に比べ、認知障害が少ないことが見いだされたそうだ。
「認知症に対する緑茶の改善効果メカニズムに関しては、今後の研究によって解明が進むことが大いに期待できますね」(提坂所長)

緑茶カテキンが〝がん〟のリスクを軽減

 超高齢社会の中、年々増えつつある認知症と並んで脅威となるのが〝がん〟だ。医学は進歩するも、がんを制圧できず、日本人の死因の第1位を長年がんが占めている。
 前出の提坂所長によると、緑茶カテキンには紫外線や化学物質による遺伝子の変異を抑え、細胞の異常な増殖を抑制する作用があり、さまざまな研究において、緑茶カテキンが発がんやがん細胞の増殖および転移を抑えることが報告されているという。
 中でも、04年、国立がん研究センターの予防研究グループが緑茶を1日に5杯以上飲用する女性では、1杯未満の人に比べて胃がんのリスクが約3割低くなるという研究結果を学術専門誌に発表し、注目を浴びた他、同グループは11年までに発表した日本人の胃がんと緑茶の飲用に関する学術論文12件を総合的に解析した結果、日本人女性においては緑茶の摂取が胃がんリスクを低下させる可能性があるという結論を発表している。
 また、岐阜大学医学部の森脇教授(当時)らは、大腸ポリープを内視鏡で切除した125人のうち60人に緑茶カテキンを含む緑茶エキスの錠剤3錠(計1.5g、6杯分)を毎日飲んでもらい、飲まない65人を対象にして、1年後のポリープ再発率を比較した。その結果、飲用群の再発率は、非飲用群の約2分の1であり、大腸ポリープの再発抑制が確認された、という研究論文を08年に発表している。
 がんも認知症も健やかに過ごすことを阻害する強敵だ。そんな強敵に負けないためには緑茶を毎日習慣的に飲むことが必要だろう。