猛暑で体のアチコチが脱水…胃腸の「熱中症」にも要注意

毎日暑い暑い/(C)日刊ゲンダイ
毎日暑い暑い/(C)日刊ゲンダイ

 梅雨が明けてから連日、猛暑が続いている。熱中症対策が盛んにアナウンスされているが、「胃腸」にも注意が必要だ。
 大量の汗をかく夏は、脱水傾向が強くなる。熱中症の原因にもなるが、胃腸にもダメージを与える。
 実際、暑くなってくると「虚血性腸炎」の患者が増えるという。

 脱水状態になると、血液の量が減って血の巡りが悪くなり、胃腸への血流も減る。腹部を流れている上腸間膜動脈と下腸間膜動脈が分岐している箇所はもともと血の巡りが悪く、脱水によってさらに血流が悪化すると、そこに位置する下行結腸からS状結腸にかけての部位に炎症を起こしたり、潰瘍ができてしまう。これが、虚血性腸炎だ。

 日本消化器病学会専門医の江田証氏(江田クリニック院長)はこう解説する。
「脱水状態になりやすい夜間に発症するケースが多く、下行結腸やS状結腸がある左側腹部に激痛が走り、血便や下痢を起こします。昔は動脈硬化が進んでいる高齢者に多かった病気ですが、最近は40代以下の若い人にも増えています。先日も夜中に虚血性腸炎を発症した患者さんが運ばれてきました」

■睡眠中に200ミリリットル発汗

 夏の夜は、想像以上に汗をかいて知らないうちに脱水状態になっている人が多い。
 睡眠中の発汗量は200ミリリットルを超えることもある。寝る前にしっかり水分を補給して、予防したい。

 夏になると増える胃腸障害は他にもある。代表的なものは、胃酸が薄まることによって起こる「消化不良」と、自律神経の働きが狂って起こる「食欲不振」だ。
 暑いからといって冷たい飲み物をがぶ飲みしていると、胃酸がどんどん薄まって消化吸収がしづらくなり、胃への負担が増大する。
 冷房で体を冷やしすぎたり、冷えた室内と暑い室外との出入りを繰り返していると、自律神経の働きが狂ってしまう。自律神経は胃の動きにも関わっていて、胃の蠕動運動も低下する。消化に時間がかかって胃もたれや胸やけを起こしやすくなり、食欲も低下してしまう。

「こうした夏場の胃腸障害には、漢方薬の『六君子湯』が効果的です。胃から産生される『グレリン』というホルモンの分泌を促します。グレリンは自律神経の中枢である視床下部に働き、食欲を増進させる効果があるのです。大根おろしもオススメです。夏大根の辛味はスパイスの働きをして食欲を増進します。胃の血流量を増やして胃腸を刺激することで、胃の蠕動運動も活性化します。また、大根はジアスターゼというでんぷん分解酵素や、プロテアーゼというタンパク分解酵素などを豊富に含んでおり、疲れた胃の消化も助けてくれます」

 大根に含まれる酵素は熱に弱いため、生で食べるのが重要。細かくすりおろして食べると、酵素の働きがアップするという。
 他にも、夏場は食中毒などの感染症が増える。食べ物はなるべく加熱調理し、調理後は5~6時間以内に食べる。手洗いや食器類の殺菌消毒も普段以上に徹底したい。

関連記事