がんの可能性も…爪の「色と形の変化」は病気のサイン

写真はイメージ/(C)日刊ゲンダイ
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 爪が白くなったら危ない――。爪の色や形の変化から病気が推測できるという。北里大学医学部皮膚科の高須博診療准教授に詳しく聞いた。

 爪は皮膚の一部で、毛細血管やリンパ流が届ける栄養によって生成される。臓器の不調で末梢の血液循環に障害が起こると、指先のリンパ液の流れも悪くなり、爪の栄養状態が悪化して変色や変形を起こす。急激な変化や不自然な色、形に気付いたら病気を疑った方がいい。

「血液の末梢循環障害の兆候として、爪の白色や黄色、赤茶色への変色が見られます。白くなるのは、血流が途中でストップして爪まで届かなくなるからで、肝硬変、肺がん、白血病、心不全などが考えられます。比較的初期に表れる症状なので、発見したら医師の診断を受けてください」

 水虫によって足の爪が白く変色するケースもある。悪化すると緑膿菌が繁殖して、緑色になったり、角質が異常増殖して爪の下が厚くなるという。加齢による栄養状態の悪化や、爪とその下の皮膚との結合が弱くなると、透明度が低下して白くなることも多い。

 爪の下半分が白、上半分が黒ずんだ状態になる「ハーフ&ハーフネイル」は、腎不全や人工透析などを受けている患者に見られるという。

「同じ血流障害でも、甘皮部分にある毛細血管が詰まって破れることで出血が起こり、爪に赤茶色や黒褐色の短い線が表れる場合があります。これは、全身性疾患の存在を疑わせるもので注意が必要です」

 特に心臓内部に細菌が感染する感染性心内膜炎が原因の場合は要注意。菌塊が毛細血管に詰まって破れることで起こり、急性の場合は命の危険がある。

■栄養状態悪化で変形

 循環障害で白色、茶色のほかに見られるのが黄色への変色だ。原因は2種類あり、まず疑われるのが肺疾患。これも肺機能が弱って酸素が全身に行き渡らず、末梢のリンパ流の栄養障害が起きる。

 もうひとつは「イエローネイル症候群」と呼ばれるもので、爪の変色、顔や手足のむくみ、慢性的な肺疾患という3つの症状が見られる。これは、脂質代謝異常によって発生するリポフスチンという脂質の色素沈着が原因。肺疾患があり、爪の変色があれば病状の変化を疑った方がいい。

 爪の変色で、もっとも危険なものは黒色だ。

「私が専門としている『黒色線条』はホクロのがんです。爪の下にできたホクロの母斑細胞からメラニン色素が生成されると、爪に黒い線条の変色が起こります。良性の場合もありますが、線の幅が6ミリを超えていたり、急激な太さの増加があった場合は悪性を疑うべきです」

 線条ではなく、爪全体と周辺の皮膚まで黒くなるケースは、ステロイドを生成する副腎の機能低下(アディソン病)の可能性がある。また、抗がん剤の副作用でも顔や手全体が黒色に変色するという。

「病気と間違えやすいのが、外傷性の内出血です。痛みを伴わずに、出血が起こって黒色に変色します。こちらは特に心配する必要はありません」

 変形では、爪が丸くなる「ばち状指」や、盛り上がる「時計皿爪」などがあり、これらも血流障害による栄養状態の悪化が原因。

 ばち状指で、さらに爪に白く変色が見られたら、肺がんの可能性が高いという。

 爪がへこむ「匙状爪」は、鉄欠乏性貧血の人に多く見られる。溝や裂傷、小さな針状のへこみができることもあるが、これらはあまり気にする必要はない。

「ただし、爪の変色や変形はあくまで病気を疑うサインのひとつにすぎません。爪の異変から病気を確定することは難しく、個人差もあります」

 安易に自己判断はせず、医師に相談すべし。

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