オシム氏が入院…心筋梗塞や脳卒中経験者は腎臓病に要注意

(C)ラ・ストラーダ/六川則夫
(C)ラ・ストラーダ/六川則夫

 先月半ば、イビチャ・オシム氏がオーストリアの病院に入院したという。

 オシムといえば、言わずと知れた、サッカー元日本代表監督。07年11月に脳梗塞を発症。監督退任後は日本サッカー協会のアドバイザーを務めたが、09年に母国ボスニア・ヘルツェゴビナに帰国。同国代表チームのW杯ブラジル大会の活躍を支えたことをご存じの方も多いはずだ。

 今回の入院は腎臓病の検査のため、ということだが、過去に心筋梗塞や脳卒中を経験した人にとってオシムの入院は他人事ではない。腎臓病専門医で松尾内科クリニック(東京・桜新町)の松尾孝俊院長が言う。

「心筋梗塞や脳卒中というと血液のことばかり気にする人がいますが、腎臓のことも注意する必要があります。腎臓病とこれらの病気とは深い関わりがあるからです。実際、慢性腎臓病(CKD)の人は健康な人に比べて2倍の確率で心血管イベントになりやすいことがわかっています」

■腎機能低下という悪循環

 腎臓は体の老廃物を濾過し、尿として排泄する働きを持つ。その機能が低下すると、血管内皮の収縮や拡張などの機能が失われ、動脈硬化が進み、高血圧を招くからだ。

「腎臓の機能が低下した人は、心臓の太い動脈(冠動脈)や脳血管の動脈硬化が進み、心血管イベントの発症リスクが高まるのです。こういうと一般の人は心筋梗塞や脳梗塞が発症する前に、腎臓の病気が発症しそうに思うでしょうが、必ずしもそうではありません。尿タンパクが出るとか、クレアチニン値が高くなるなど、腎機能が少し低下している状態で心筋梗塞や脳卒中が発症すると、腎機能低下が表面化することは少なくないのです」(松尾院長)

 つまり、心筋梗塞や脳卒中を経験した人は腎機能低下の悪循環の状態に入ったといえるのだ。

「心筋梗塞や脳卒中といった重大病を発症してなくても、血圧が高い人は腎臓の機能低下を疑わなければなりません。ところが、高血圧の正常値をめぐる医学会のゴタゴタから、“血圧なんて気にしなくていい”という風潮がある。残念なことです」

 高血圧を甘く見るな――。

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