外来OK 「体外衝撃波」でテニス肘・ゴルフ肘の痛みを消す

写真はイメージ/(C)日刊ゲンダイ
写真はイメージ/(C)日刊ゲンダイ

 テニス肘やゴルフ肘でなかなか消えない痛みに効果があるのが、体の外から衝撃波を当てる体外衝撃波療法だ。もとは尿路結石の治療法だが、1990年代に関節の痛みの軽減にも効果があるという報告がヨーロッパであり、整形外科領域でも応用されるようになった。

 腱付着部は腱や靱帯が骨に結合する部位で、繰り返す外力により破綻が生じやすい。その部位に変性や外傷が加わることで生じる疾患を総称して、腱付着部症という。

「いわゆる使い過ぎ症候群(オーバーユース)が大きな要因のひとつです。当院整形外科では体外衝撃波の効果を以前より研究し、機械の認可が下りた2008年に取り入れました。腱付着部症のひとつ、足底腱膜炎に対しては12年から保険適用になりました」(千葉大学医学部付属病院整形外科・落合信靖助教)

 体外衝撃波療法は、腱付着部症では「痛みを感じる神経終末を破壊して痛みを取る短期的効果」と「腱を修復するようなサイトカインを産生し、腱の再生を促す長期的効果」が期待できる。

 タオル絞りなどの動作で肘の外側から前腕にかけて痛みが生じるテニス肘や、肘の内側に痛みが生じるゴルフ肘も腱付着部症の一種になり、体外衝撃波の治療が有効。ただし、この2つは保険適用になっていない。

■副作用はほとんどなし

 テニス肘やゴルフ肘、足底腱膜炎と診断されると、まず安静にし、湿布や外用薬、リハビリなどの保存療法が行われる。半年以上たっても痛みが消えない場合、体外衝撃波療法が検討される。

「たいていは体外衝撃波療法の直後から痛みが軽減します。回数は、テニス肘やゴルフ肘では患者さんの症状次第ですが、平均して月1回、合計7回程度で症状の改善をみて終了となります。保険診療が可能な足底腱膜炎は、3カ月間は何回治療を受けても同一金額と保険で決められています」

 エネルギー量は、尿路結石の50分の1程度。強さは7段階で、患者の痛みの様子を見ながら調整する。1分間に240発の衝撃波が発せられ、10~20分ほど治療を行い、外来通院治療が可能だ。

「病変の適切な箇所に当たっているか、普段痛みを感じている部位に当たっているかを超音波で確認しながら治療します」

 治療中に多少の痛みがあるだけで、目立った副作用はない。一般的には、腱付着部症が保存療法で改善しない場合、内視鏡で腱のついているところを“掃除”したり、腱をはがして縫い直したりといった手術が必要になる。しかし、入院の必要のない体外衝撃波療法は、手術の前に受ける治療として、患者の負担が少なく有用な治療法だ。

 体外衝撃波には、「骨が癒合するのを促進する」という作用もあり、骨折した骨がくっつかない「偽関節」にも用いられている。効果は7~8割だ。

「動物実験の段階ですが、衝撃波が当たることで細胞膜に穴が開くので、その穴を使って、遺伝子導入をする研究も行われています。今の遺伝子導入方法はウイルスを用いるのが一般的で、副作用の危険性がある。副作用の少ない体外衝撃波は良い方法と考えられます」

 この方法が可能となれば軟骨再生や、内因性オピオイド産生遺伝子を導入し痛みをもっと長期的に取るといった治療が今後行われるようになるかもしれない。また、体外衝撃波の筋肉の緊張を緩める作用を利用し、脳卒中後の過剰な筋緊張を改善するのに用いることが可能かもしれないとも考えられている。

関連記事