致死率50%にも…デング熱がエボラ級に重症化する“条件”

“震源地”となった代々木公園/(C)日刊ゲンダイ
“震源地”となった代々木公園/(C)日刊ゲンダイ

「デング熱に感染しても重症化することはまれ。(デング熱を媒介する)蚊はあまり行動しないため、感染が大規模に広がることは考えられない」

 厚労省は1日、事態を鎮静化するコメントを発表した。

 デング熱は、デングウイルスに感染すると発症する病気で、インフルエンザのような高熱が主な症状。日本ではヒトスジシマ蚊がウイルスを媒介する。感染しても発症しなかったり、発熱などの軽症で済むケースも多い。

 厚労省のコメントにウソはないが、病気の実態を正確に伝えてはいない。条件次第では重症化しやすく、感染拡大は時間の問題なのだ。

 東京医科歯科大名誉教授の藤田紘一郎氏は、40年以上にわたってアジアの熱帯地方を訪れ、感染症を研究している。その感染症学の権威は重症化リスクについてこう警告する。

「デングウイルスは4つのタイプがあり、1つのタイプに感染しただけなら、確かに重症化はまれです。しかし、さらに別のタイプのウイルスに感染すると、『デング出血熱』という重症型を高い確率で起こしやすいのです。その致死率は40~50%に上ることもある。いまアフリカで流行しているエボラ出血熱の致死率に匹敵します」

■媒介蚊は東北以南に分布

 今回の“震源地”は代々木公園のみで、感染者のウイルスのタイプは1つとみられる。かといって、日本に存在するウイルスが1つである保証はないという。

「デング熱の流行地は、タイやマレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナム、インドなどのアジアの熱帯地方。この地域からの観光客のうち、さまざまなタイプのウイルスの感染者が発症せずに来日している可能性は高い。また、ヒトスジシマ蚊は、東北より南に広く分布しています。その2点を加味すると、日本人が複数のウイルスに感染する恐れは十分。感染拡大も時間の問題です」(藤田紘一郎氏)

 日本政府観光局のデータによると、藤田氏が指摘する熱帯の国々からの観光客は、昨年1年間で合計約103万人。日本人が出張や旅行で、これらの国を訪れる可能性もある。厚労省の見通しは甘過ぎる。