痛風発症リスク20倍以上 ビールより怖い遺伝子変異

飲み過ぎはダメ/(C)日刊ゲンダイ
飲み過ぎはダメ/(C)日刊ゲンダイ

「ビールの飲み過ぎが痛風のリスクを上げる」は半ば常識になっているが、そうとばかりはいえないことが明らかになった。研究を行ったのは、東京薬科大学病態生理学教室・市田公美教授、防衛医科大学校分子生体制御学・松尾洋孝講師、東京大学医学部付属病院薬剤部・高田龍平講師ら。市田教授に話を聞いた。

 これまで尿酸値が高ければ、みな一律に生活習慣改善を指導されてきた。

「ところが今回、遺伝子『尿酸排泄輸送体ABCG2』に変異があると、尿酸の排泄機能が落ちて体内に蓄積し、高尿酸血症・痛風(以下、痛風)のリスクが著しく上がることが分かったのです」

 最初に、日本人の患者90人を対象に調べたところ、8割が尿酸排泄輸送体ABCG2の遺伝子変異を持っていた。遺伝子変異にはさまざまなタイプがあるが、そのうちQ126X、Q141Kの2タイプが尿酸の排泄機能を著しく下げ、しかも起こる頻度が高い(持っている人が多い)ことが明らかになった。

「Q126XはABCG2を介した尿酸排泄機能をほぼゼロに、Q141Kは半分にし、それぞれ日本人では約3%、30%の頻度で見られます」

 私たちは父と母から遺伝子を1つずつ受け継いでいる。その2つの遺伝子を、尿酸排泄輸送体ABCG2の「変異なし」「Q126X」「Q141K」で組み合わせていくと、尿酸排泄機能は100%、75%、50%、25%以下の4段階に分けられる。つまり、フルで尿酸排泄機能が働いている人に比べ、段階的に低くなる。

「痛風患者だけを対象に見ると、遺伝子によって尿酸排泄機能が低い人は、その数値が低いほど平均的な尿酸値が高く、痛風発作を早く起こしていました。特に20代、30代で発症した人は、ほとんどが遺伝子変異を持っていました。次に、健康な男女739人に対しても研究を行いましたが、やはり排泄機能が低い人は、現在は痛風を発症していなくても、尿酸値が高めだと分かりました」

 痛風発症のリスクは、遺伝子が正常な人に対し、変異がある人は、最大20倍以上だという。

■肥満や飲酒よりリスキー

 肥満や飲酒と比べるとどうか? 5005人の男女を対象に「人口寄与危険度割合(PAR)」という指標で影響力を比較すると、肥満(肥満指数BMI25以上)の人は痛風発症への影響力が18.7%、1週間のアルコール摂取量が196グラム以上のヘビードリンカー(男性の場合)は15.4%であった。

「ところが、尿酸排泄輸送体ABCG2の変異遺伝子を持っている人は29.2%と、肥満やヘビードリンカーよりも高かった。痛風の発症リスクを高める生活習慣として指摘されてきた肥満、飲酒よりも、遺伝子の方が影響力が上だったのです」

 尿酸排泄輸送体ABCG2の変異により、尿酸排泄機能が4分の1だけ低下してしまっている人が一番多い。
 ABCG2の変異で排泄機能が4分の1だけ低下するのは、ウイスキーを1週間に1.7リットル飲むこと、あるいは身長170センチの男性が5・7キロ太ることと同程度の影響を、尿酸値を上昇させる方向に与える。

 まずは遺伝子の型を調べることだ。外注で行われるので、「ABCG2遺伝子多型解析を受けたい」と希望すればどの病院でも可能。1万5000円。もし、自分が痛風を起こしやすい遺伝子を持っているなら、より一層の生活習慣改善が必要だ。