秋うつは「窓際」で撃退 日の出時刻を脳に感知させる

写真はイメージ/(C)日刊ゲンダイ
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 アッという間に季節は秋に突入した。なんだか気分が落ち込んで、ちっともやる気が起きない……なんて人はご用心。“秋うつ”かもしれない。

 日照時間が少なくなる季節には「冬季うつ」と呼ばれるうつ症状が表れやすくなる。「気分が沈んで気力がなくなる」「とにかくイライラする」「いくら眠っても寝足りない」「食べても食べても物足りない」といった症状が表れる。

 一過性で精神的な問題を抱えているわけではなく、いわゆるうつ病とは違う。だが、毎年必ず秋から冬にかけてうつ症状を繰り返し、日常生活に支障をきたすケースもある。季節の変わり目となる秋は注意が必要だ。

“秋うつ”のトリガーになるのは「日照時間」だ。作業療法士の菅原洋平氏がこう解説する。

「秋になると、夏に比べて日の出時刻が遅くなります。人間の体は、光を感知することで環境に対応するための準備を始めるようにできている。日光を感知した時点で、〈このタイミングなら気温がこれぐらい下がりそうだから、この程度のホルモンを分泌して調整しよう〉といった具合に働き始めるのです。日の出時刻が遅くなると、体が準備を始める時刻も遅くなりますが、起床時に日光を十分に感知できなかった場合、日の出時刻が早い夏のタイミングで準備を始めようとします。このズレが、さまざまなうつ症状を発症させる要因になるのです」

 環境の変化に合わせ、循環、呼吸、消化、体温調節、内分泌機能などの活動を調整しているのは自律神経だ。夏から秋に変わる時期は、休息しているときに働く副交感神経が優位だった状態から、活動時に働く交感神経が優位な状態に切り替わる。朝の光を感知できないと、この切り替えもうまくいかなくなる。

「自律神経の調節の基準になるのは、もともと体に備わっている生体リズムで、それをリセットしたり、コントロールしているのは日の出なのです」(菅原氏)

 季節性うつを発症しやすい人は、日当たりの悪い部屋に住んでいるケースが多いという。それだけ、日の光が心身に与える影響は大きいのだ。

 秋になって日照時間が短くなることも、うつ症状の要因になる。精神科医の奥田弘美氏は言う。

「人間は、日光を浴びて神経伝達物質の『セロトニン』を生成しています。セロトニンは、気持ちを明るくしたり、やる気を高めるなどの作用があり、夜になるとセロトニンをもとに睡眠ホルモンである『メラトニン』をつくります。夏の疲れが残っていると、日照時間の変化にホルモン調整が追いつかず、睡眠リズムが乱れてうつになりやすいのです」

■夏の疲労をとることも大事

 本格的な冬季うつになる前に、秋にしっかり手を打ちたい。まず、日に日に遅くなる日の出時刻をしっかり脳に感知させることが重要だ。

「夜の就寝は、カーテンを少し開けて窓際で寝るようにしましょう。日の光は網膜でしか感知できないので、窓に頭を向けて寝るのがベストです。環境的に窓際で寝ることができない場合は、目覚めたらできるだけ早く窓際から1メートル以内に入り、脳に日照時間の変化を知らせてください。これを毎日繰り返すことが重要です」(菅原氏)

 不調を感じたら、副交感神経を優位にするのも効果的。秋は交感神経が高まって活発になるが、逆にリラックスできず、うまく休息できなくなる場合がある。副交感神経節は、首や尻の中央付近の仙骨にある。この部分をホットパックなどでじんわり温めるとバランスが整ってくるという。

「暑い夏の間にたまった疲労をしっかりとることも大切です。行楽シーズンだからといって、土日にあちこち出歩くことは避け、まずはしっかり休息してください」(奥田氏)

 これで、秋の物悲しさも乗り切れる。

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