朝からじわじわズキズキ…放っておいたら危ない頭痛の症状

写真はイメージ/(C)日刊ゲンダイ
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 朝起きると頭痛がする。市販の頭痛薬を飲んでも治らない。何か脳の重大な病気ではないか?――。そんな不安を抱え、病院の「頭痛外来」に駆け込む中高年は少なくない。どんな頭痛が危ないのか? 東京医科歯科大大学院・神経内科学の横田隆徳教授に聞いた。

「頭痛には緊張型頭痛、片頭痛、群発頭痛といった慢性的に起きる一次性頭痛と、脳梗塞や脳腫瘍といった病気が原因で起きる二次性頭痛があります。頭痛の大半は命にかかわらない一次性頭痛で、緊張型頭痛と片頭痛が多い。この2つは日本人の約6~7割が経験するといわれています」

 実は、朝からなんとなく「締め付けられるように」頭が痛いというのはほとんどが緊張型頭痛。全体的にジワジワと痛く、左右差はないのが特徴だ。

「その原因は精神的、肉体的ストレスであることが多く、心配事が解決したり、旅行などでストレス解消すれば軽快するケースもあります」

 緊張型頭痛の中には寝ている間の姿勢や噛み合わせが原因の場合もある。

「枕が高すぎて、首や肩の筋肉が緊張することで起きることもあります。また、人は寝ている間に誰でも歯を食いしばりますが、それが過度の場合は緊張型頭痛を引き起こします」

 ほかに頚椎捻挫、交通事故の後遺症でのむち打ち症、蓄膿症、睡眠時無呼吸症候群などでも緊張型頭痛を引き起こすが、適切な治療を受ければ、改善する場合もある。

 ちなみに、「起床時の頭痛は片頭痛のせいだ」と思い込んでいる人も多いが、間違いだ。

「片頭痛はセロトニン(血管を収縮させる作用を持つ)が放出されるため、いったん脳の血管が収縮したあと、頭部の血管が逆に拡張したり、何らかの刺激によって三叉神経などが刺激され痛みを起こす病気と考えられている。痛みが出る前に目の前がチカチカする閃輝暗点症状などの前駆症状があるのが典型で、多くは拍動性のズッキンズッキンという痛みの特徴があります。しかし前駆症状があるとは限らず、起床時にきまって起きることはめったにありません」

 つまり、朝からの頭痛の大半は片頭痛の薬を飲んでも無駄なのだ。

■頭を打った数週間後の痛みは要注意

 問題は、命に関わる病気が進行している二次性頭痛のケースだ。

「例えば脳動脈解離を伴い、血栓が末端の動脈をふさいで脳梗塞になる場合です。前兆としてドーンと頭痛が出て、まれに朝から頭痛というケースもあります。痛みは10日間続くことも。頭痛とともに手の麻痺、箸を落とす、言葉が出にくい、手足のしびれなどの症状も伴います。それらの症状に気づいたら即MRI検査で患部を把握、治療を受けることです」

 転倒や衝突などで頭を打った後、2週間から3カ月後に頭痛が出現したら、「慢性硬膜下血腫(SDH)」を疑うべきだ。

「脳を包む硬膜と脳の間に血腫ができる病気で、頭部打撲から数週間から数カ月かけて血腫ができ、その圧で脳の働きが低下します。頭痛だけでなく、ふらつきや認知症状、失禁などの症状が加わって、放置すると麻痺や意識障害が生まれ、最後は脳幹などを圧迫して呼吸を止めてしまいます」

 70代の男性は、“朝から片頭痛らしき頭痛がする”と来院。診察したところ、まっすぐに歩けない。聞くと1カ月前に、テニスでフェンスに激突。頭をぶつけたという。MRIをとると硬膜と脳の間に血液がジワジワとたまる静脈性出血を起こしていた。

「幸いこの男性は手術で血液を除去し回復しましたが、放っておいたら危なかった。50歳を過ぎると畳に軽く頭を打っただけでSDHになる場合があります。朝からの頭痛、物忘れ、歩行障害、失禁などの症状があり、頭を打った記憶があれば病院で診てもらうことです」

 頭痛は頭痛以外の異変に注意することが重要だ。

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