スーパーの豚レバー2~3%が感染 急増中「E型肝炎」の恐怖

写真はイメージ/(C)日刊ゲンダイ
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 今年6月、厚労省がE型肝炎などの発症リスクが高いとして、飲食店での豚の生食提供を禁止する方針を決めた。2012年に牛レバーの生食提供が禁止されて以降、豚レバーを提供する店が増えた。厚労省の12年12月の調査では、首都圏を中心に全国80店で豚レバーが提供されていたという。食べる機会が増えたからか、感染者も増えている。E型肝炎は、B型やC型と比べてあまり耳にしないが、どういうものか?

「10年ほど前までE型肝炎ウイルス(HEV)は日本にはいないと考えられていました」と言うのは、E型肝炎研究の第一人者である東芝病院研究部・三代俊治部長だ。

「海外渡航者が熱帯地方で感染し、日本に帰国してから発症する輸入感染症だとみていたのです。しかし、日本にもHEVが土着していることが判明し、医師の関心も高まった。3年前にはHEVの検査薬が保険適用になりました。原因不明の急性肝炎がたくさんありましたが、調べてみると3分の1ほどはE型肝炎だと分かったのです」

 HEVは、豚や野生のイノシシを介して感染する。イノシシが多い山にいる野生のシカも感染源になる。「野生のイノシシやシカなんて食べる機会がない」と東京や大阪に住む人間は思うかもしれないが、これらが多く取れる地域では、家庭で食べることはとりたてて珍しいことではない。

「厄介なのは、豚やイノシシ、シカがHEVに感染していても全く症状が出ないことです。ある地域で重症のE型肝炎発症例が相次いだので調査を行うと、市販の豚レバーからHEVが検出されました。養豚場の豚は飼育中にほぼ100%がHEVに感染しますが、症状を出さないので養豚農家も気づかず、商品として流通してしまうのです」

 その中には、健康に育っていることを証明する「SPF豚」も交ざっている可能性がある。

「北海道のスーパーで売られている豚生レバー363個を調べたところ、7個(約2%)からHEVが見つかりました。東京のスーパーでも無作為に豚生レバーを購入し、調べたところ、やはり2~3%にHEVが見つかりました」

■劇症肝炎を起こして死亡することも

 HEVの潜伏期間は比較的長く、2~8週間、平均6週間だ。

「B型・C型肝炎ウイルスは、感染すると慢性化し、人から人へと感染させる場合がありますが、HEVは基本的に一過性で、人から人への感染もありません。しかし重症化すると、劇症肝炎で死に至ることもある。高齢者ほど発症しやすく、重症化しやすい。あえて直感的に数字をいえば、60歳以上なら50%が発症し、そのうち50%くらいは重症化すると思っていい。慢性の肝疾患がある人は、年齢が若くても発症・重症化のリスクが高い」

 中高年男性の感染・発症が圧倒的に多いが、「おそらく、その年代の男性は豚レバーなどのホルモン類を食べる機会や、脂肪肝など慢性疾患を持っている率が高いからでしょう」と三代部長は指摘する。

 感染・発症を避けるには、火を十分に通して食べること。

 65度で1時間加熱してもHEVは死なないので、赤い部分が残らない程度まで、しっかり加熱する。HEVは肝臓や腸管に多い。肉には少ないが、血管が通っているので、HEVがゼロとはいえない。ジビエ料理の人気で、イノシシやシカ肉を提供する店も増えているが、豚同様に、要注意だ。

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