力む習慣ありならかかりやすい 便秘気味なら「直腸瘤」を疑う

写真はイメージ/(C)日刊ゲンダイ
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 排便がうまくいかない「排便困難」の原因で代表的なのが「直腸瘤」だ。ただし、比較的新しい概念のために医師でも精通している人は少なく、見逃されているケースが珍しくない。複数の科で直腸瘤の治療にあたっている「辻仲病院柏の葉」(千葉県)の辻仲康伸院長に聞いた。

 直腸は肛門とつながっている。この直腸がポケット状に膨らみ、突出したのが直腸瘤だ。腸を通って肛門から排出されようとしている便が、その直前に“落とし穴”のようになっている直腸瘤に入り込み、便が出にくくなる。

 患者の7~8割が女性。それには、出産が関係している。

「出産で強く力むと直腸に圧力がかかる。直腸は屈曲しているので、前方に特に圧力がかかります。そこに加齢が重なって、直腸と膣の間の壁の組織が緩み、ポケット状にへこんでいくのです」

 出産以外では、高度の便秘症や排便時に何回も力む習慣がある人に直腸瘤が出来やすい。また、直腸瘤と同様の原因で起こる「骨盤臓器脱」も併発している人が、高齢者を中心に多い。骨盤臓器脱は、骨盤底の緩みで起こる子宮脱、直腸脱、膀胱脱などの総称だ。

「直腸脱の診断・治療が厄介なのは、直腸瘤だけという人もいれば、骨盤臓器脱もあるという人もいること。大腸肛門科、泌尿器科、婦人科など複数の科が連携して治療を行うべきですが、実践している施設はあまりない」

 婦人科で子宮脱を指摘されたが、婦人科領域ではない直腸瘤の診断・治療に至らなかった。あるいは、直腸瘤は大腸肛門科で治療を受けたが、子宮脱、膀胱脱は放置された――。こういったケースは珍しくないのだ。

■食物繊維を取る、スクワットも効く

「直腸瘤そのものの診断も、大腸肛門科を受診したのにスムーズに行われていないケースが結構あります。お尻の穴を見るだけでは直腸全体の形が分からないので、排便時の直腸の形を見る『排便造影』を撮らなくてはなりません。それをせずに『便秘です』と下剤を処方されてしまうのです」

 直腸瘤を疑うポイントは、①慢性的な便秘がある②残便感がある③会陰や膣の側を指で押すと便が出やすい。
 理想的なのは、骨盤臓器脱も含め総合的に診断・治療を行っている病院を受診することだ。見つからなければ、腸を専門にする大腸肛門科医を受診しよう。

 直腸瘤と診断されると、“瘤”があまり大きくない初期なら、排便機能を改善する訓練を行う。排便時に力みすぎない、食物繊維をはじめ排便をよくする食事を取るなどだ。スクワットなどで下半身の筋肉強化も役立つ。

 それでは効果がイマイチという場合は、手術だ。膨らんで緩んだ直腸を引っ張り合わせて縫う方法や、合成繊維でできたメッシュを膣と直腸の間に置いて壁を補強する方法など、幾通りもの手術があり、患者の状態に応じて選ぶ。

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