親指を伸ばして箸やペンを握ると…ツラい関節障害を招く

持ち方をチェック/(C)日刊ゲンダイ
持ち方をチェック/(C)日刊ゲンダイ

 ペンや箸を使うとき、どんな握り方をしているだろうか? 昔は変わった握り方をしていると、親や先生に厳しく注意されたものだ。最近はそうでもないらしい。握り方が悪いと、指や手首に激痛が走って曲げられなくなる人もいる。見直したい。

「KIZUカイロプラクティック」の木津直昭院長が、高校で教師をしている患者に協力してもらい、生徒40人についてペンの握り方を実態調査した。

 すると、【写真①】のように親指の先端ではなく、付け根付近で握っている生徒が17人もいた。さらに、親指側を上にした状態で、親指を他の指で隠すように拳をつくり、そのまま手首を小指側(下側)に動かしたときに痛みがあるかどうかをチェックする【写真②】の「フィンケルシュタインテスト」を実施したところ、17人中7人が“陽性”だったという。

 このテストは「ドケルバン病」と呼ばれる腱鞘炎の診断に使われる。ドケルバン病は、親指を伸ばす筋肉である長母指外転筋と短母指伸筋腱が、手首の背側にあるトンネル状の腱鞘で炎症を起こして発症する。手首や指を曲げたり伸ばしたりする際はその中を腱が通過するが、酷使などで炎症を起こした腱がうまく通過できなくなって、手首の親指側から手首にかけて痛みが走るようになる。

「頻繁に子供を抱っこする産後の母親に発症するケースが多い障害です。ただ、最近はパソコンやスマホ、携帯電話などを過度に使う機会が増えたことで、激痛で親指や手首を曲げられなくなって来院される患者さんが増えています。中には、患部が腫れたり、手が変形したり、手を開けなくなってしまう人もいる。症状が悪化すると、手術が必要になるケースもあります」(木津院長)

■筋肉の癒着も進行

 このドケルバン病の発症に大きく関わっているのが、ペンや箸の持ち方だ。パソコンやスマホを頻繁に使って指や手首を酷使していても、障害が発生する人としない人がいる。その差は、習慣的な指の使い方に原因があると考えられているのだ。

「本来なら指を曲げて使うべきときに、伸ばした状態で使い続けていると腱に過度の負荷がかかります。これがドケルバン病を引き起こす大きな原因です。たとえばペンを握るとき、他の4本の指と同じように親指を曲げて指先を使うようにしていれば、腱に負担はかかりません。しかし、親指の付け根付近でペンを握る人は、他の4本の指が曲がっているのに親指だけが伸びた状態になり、腱に負荷がかかるのです。親指の関節に偏った力が加わると、筋肉の癒着も進行します」(木津院長)

 親指の付け根付近を使って物を握る人は、ペンだけでなく、箸、洗濯ばさみ、マウス、傘、ゴルフのグリップなども同じように握るケースが多いという。ネイルアートに凝っている女性の中には、なるべく指先を使わないようにして指の腹でキーボードを打っている人もいる。こうした日頃の指の使い方が、腱の負担を蓄積させ、ドケルバン病の原因になっているのだ。

「物を握るときに指先を使うと、集中力が必要になります。一方、指の付け根付近で握る場合は、それほど注意することなく何となく持つことができる。集中力がいらない分、楽に握ることができるので、指先を使わない人が増えていると考えられます」(木津院長)

 指や手首が痛くて曲げられなくなる前に、ペンや箸の持ち方を改めて見直すべし。

関連記事