危険な副作用がこんなに…湿布を貼ったまま寝てはいけない

「痛いからとりあえず」は要注意/(C)日刊ゲンダイ
「痛いからとりあえず」は要注意/(C)日刊ゲンダイ

 肩や腰が痛い。関節をひねった。筋肉痛でつらい……。そんなとき、寝る前にとりあえず湿布薬を貼って様子をみるなんて人も多いはず。この行為、実は危ない。

 患部に手軽にペタリと貼り付ける湿布薬、誰しも使った経験があるだろう。薬局に行けば多種多様なタイプが市販されているし、通っている病院で「腰が痛い」といえば、簡単に処方してくれる。そのため、「薬」だと意識することなく、「痛いからとりあえず貼っておこう」などと安易に使っている人は多い。

 だが、湿布薬はれっきとした「薬」で、かなり強力な有効成分が含まれているタイプもある。その分、強い副作用があるから甘く見てはいけないのだ。

 日本薬剤師会常務理事で医学博士の藤原英憲氏は言う。

「湿布薬には、インドメタシンやジクロフェナクナトリウムといった強力な痛み止めの成分が含まれています。強い副作用で知られるアスピリンやイブプロフェンなどの鎮痛剤と同じもの。湿布薬を貼り付けた皮膚から血液中に取り込まれ、全身に回ります。つまり、飲み薬を飲んだのと同じ状態になるのです。はがき大の湿布薬を10枚貼ると、鎮痛成分の血中濃度が1日分の飲み薬と同じ程度になるというデータもあります。当然、副作用も飲み薬と同程度に注意する必要があるのです」

■鎮痛成分が原因で命にかかわるアレルギー発症も

 ぜんそく患者や妊婦への使用が禁止されているほど強い副作用もいくつかある。まず注意したいのは、アレルギーだ。

 ケトプロフェンなどの鎮痛成分には、「光線過敏症」という副作用がある。湿布薬を貼ったまま紫外線を浴びると、貼った場所に発疹、腫れ、かゆみ、水ぶくれなどの症状が表れる。患部がパンパンに腫れ上がったり、全身に広がる場合もある。

「湿布を貼ったまま紫外線を浴びないようにするのが基本的な対策ですが、剥がした後も皮膚に成分が残っていて、1週間近くたってから症状が表れるケースもあります。最初は問題なくても、何度も繰り返すうちにアレルギー反応が強くなって重症化する人もいるので、注意が必要です」(藤原氏)

 鎮痛成分が原因で、命に関わるアレルギーが発症する危険もある。「スティーブンス・ジョンソン症候群」(皮膚粘膜眼症候群)と呼ばれるもので、高熱を伴いながら、全身の皮膚や粘膜にやけどのような発疹や水ぶくれなどの症状が表れる。

「口の中や目といった粘膜にも炎症を起こすので、手遅れになると失明の危険がある。臓器障害の合併症を引き起こして死亡した例も報告されています。原因ははっきり特定されていませんが、鎮痛剤もそのひとつだと考えられています」(藤原氏)

 胃腸、肺、腎臓、肝臓といった臓器障害の副作用にも気を付けたい。

 インドメタシンやジクロフェナクナトリウムなどの鎮痛剤は、体内の「プロスタグランジン」という成分の合成を阻害する効果がある。プロスタグランジンは、痛み、熱、腫れといった炎症を引き起こすため、それが作られないようにして炎症を抑えている。

「その一方で、プロスタグランジンは胃壁や腸壁を消化液から保護する粘液の分泌にも関わっています。また、胃腸を蠕動させたり、排尿のために膀胱の筋肉を収縮させる働きもある。湿布薬の鎮痛成分によって、プロスタグランジンのプラスの働きも抑えられてしまうため、胃腸に炎症や潰瘍を起こしたり、腎機能障害によるむくみが表れるケースもあります」(藤原氏)

 湿布薬を背中や腰に大量に貼って寝たら、翌日、急性胃潰瘍になって病院に運ばれた例もあるという。お手軽に長時間にわたって使っていい薬ではないのだ。

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