声がかすれ、咳が出る…その風邪症状は心筋梗塞の前兆だ

あなどったらダメ/(C)日刊ゲンダイ
あなどったらダメ/(C)日刊ゲンダイ

 風邪とインフルエンザの季節がやってきた。ゴホン、ゴホンと咳き込んでいる人も多いのではないか。たかが咳、単なる風邪と考えがちだが、気をつけなければならない場合もある。心筋梗塞の前兆かもしれないからだ。

 都内の計測機器メーカーに勤めるAさん(51歳)は、2年前の今ごろに風邪をひき、咳が止まらない日が続いたという。

「急に体がだるくなり、声がかすれ、咳が止まらなくなったのです。息苦しさもありました。ただし、途中から鼻水が出なくなり、発熱も治っていたのです。風邪にしてはおかしいな、とは思っていたのです」

 それでも風邪が長引いているに違いないと思い、市販の風邪薬を飲み続けたが、症状は一向に改善しない。
 そのうち、階段の上りなどで息苦しくなり、眠れない日が続いた。病院で診てもらったところ、心筋梗塞の疑いで緊急入院となった。

「栄養や酸素を送るための心臓の太い血管が詰まっていたのです。医師が“ここまで気がつかなかったのは不思議だ”と言うほどひどい状況でした」(Aさん)

■糖尿病は要注意

 当時のAさんは糖尿病を発症して5年ほど経っていて、神経障害を患っていたという。

「足の裏がジンジンする感覚があったのです。今になって思えば左肩や背中全体がやたらと凝っていて、奥歯に痛みがありました。本来ならもっと強い痛みを感じていたはずで、もっと早くに心臓が発した心筋梗塞のサインに気がついていたのかもしれません。ところが、神経障害のせいか、あまり深刻に捉えませんでした」(Aさん)

 それにしても不可解なのは、Aさんの咳だ。なぜ心筋梗塞の症状となるのだろうか。東邦大学医療センター佐倉病院循環器科の東丸貴信教授が言う。

「心臓は全ての臓器に血液を送り出すことで栄養や酸素を届ける役割を担っています。心筋梗塞になり働きが悪くなると、酸素を十分吸っていても肺に血液がたまり体は酸素不足となり、息苦しくなったり咳き込んだりするようになるのです」

 心筋梗塞から心不全になると夜、あおむけに寝た時に肺に血液がたまって咳が出やすくなるという。
 そうでなくても糖尿病の人は心筋梗塞への注意が必要だ。

「糖尿病の人が風邪になると、何も食べなくても血糖値が上昇します。風邪のウイルスや細菌がインスリンの分泌を抑制したり、インスリンの抵抗性を高めるサイトカインという炎症性タンパク質を増すため、インスリンの分泌や効き目が悪くなるからです。これに食欲不振や発熱、下痢が加われば血液が濃くなり、心筋梗塞や脳梗塞を起こすこともあるのです」(東丸教授)

 風邪の症状をバカにしてはいけないのだ。

関連記事