風邪と腰痛は要注意 腎臓を痛めつける怖い薬の飲み合わせ

異変を感じたら病院へ/(C)日刊ゲンダイ
異変を感じたら病院へ/(C)日刊ゲンダイ

 今年もあとわずか。最後の追い込みに必死という仕事人間も多いのではないか。多少体調が悪くても病院に行かず、薬で症状をごまかすケースもあるだろう。しかし、下手をすると急性腎不全から透析になることもある。要注意だ。

 証券会社に勤めるAさん(42)は、このところの株価上昇で寝る間もないほど忙しい。2週間ほど前から風邪気味で、腰痛にも悩まされているが、病院に行く時間がない。

「仕方なく処方薬や市販薬をフル活用して乗り切ろうと考えたのです。風邪は、病院でもらって飲み残していた抗生物質や市販薬を服用、同じく使い切らなかった腰痛の痛み止めを1日2~3回服用していました。しばらくは調子が良かったのですが、そのうち体がむくんでだるくなり、尿の出が悪くなり、食欲不振も出て、仕事のミスが多くなったのです」(Aさん)

 異変を感じたAさん、仕方なく会社近くの病院に行って驚いた。「急性腎不全」と診断されたからだ。

「しかも、“もう少し遅かったら透析になっていたかもしれません、それほど重症です”と言われ、緊急入院となったのです。確かに人間ドックでは、腎機能を調べるクレアチニン値が高いことを指摘され、腎臓が弱っていると警告されていました。しかし、これほど急激に悪化するとは思いませんでした」(Aさん)

 幸い、入院治療だけで無事腎臓の機能が回復したAさんだが、その原因となったのは持病の高血圧のための降圧剤と風邪のための抗生物質、それに腰痛のための消炎鎮痛剤だった。

■増える「薬剤性腎障害」

 腎臓病専門医でもある、松尾内科クリニックの松尾孝俊院長が言う。

「最近はAさんのように薬の副作用である薬剤性腎障害を患う人が増えています。とくに問題なのは消炎鎮痛剤、抗生物質、降圧剤で、腎臓の機能が低下している人はとくに注意すべき薬なのです」

 なぜこうした薬が腎臓の機能を低下させるのか?

「消炎鎮痛剤は痛みの成分であるプロスタグランディンとよばれる物質の生成を邪魔します。しかしその一方で、この物質は、腎臓の血流を促し、働きを維持する役割もあるのです。つまり、プロスタグランディンを抑制することは腎臓の血流を低下させ、腎不全に陥らせることになりかねないのです」(松尾院長)

 また、抗生物質は腎臓、とくに尿細管を狭くするなどして尿の排出が不十分になり、腎臓の機能を低下させることがあるという。

「さらに腎臓の働きが悪い人が高血圧の治療をする必要がある場合、急激に血圧を下げ過ぎると、腎臓の血流が滞り、腎臓の働きを悪くします」(松尾院長)

 CT検査などに使われる造影剤も注意が必要だ。すべて腎臓で排出させるため、腎臓に負担がかかり、機能を低下させるからだ。

「今回は、腎機能が回復したからよかったものの、腎機能が改善せずに透析をしなければならないケースもあるので注意が必要です」(松尾院長)

 健康を犠牲にしてまでやらなくてはならない仕事はない。忙しいときほど体に異変を感じたら病院で診てもらうことだ。

関連記事