長引く腰痛の原因…徐々に固まる「強直性脊椎炎」だった

放置せずに病院へ/(C)日刊ゲンダイ
放置せずに病院へ/(C)日刊ゲンダイ

「強直性脊椎炎」という病気をご存じか。長引く腰痛がある場合、これが原因かもしれない。東京大学医学部付属病院整形外科・脊椎外科の門野夕峰講師に聞いた。

 強直性脊椎炎は、脊椎、仙腸関節、股関節などの靭帯付着部に炎症が起こり、脊椎が徐々に「強直する=固まる」病気だ。進行すると、脊椎が曲がらなくなる。特定遺伝子が関係しているという報告もあるが、はっきりした原因は分かっていない。だからこそ、ありふれた症状である腰痛から、強直性脊椎炎ならではのサインを見つけださなくてはならない。

 いくつかの診断基準があるが、強直性脊椎炎に関連のある腰痛の特徴は次の通りだ。

「(1)40歳未満から痛みがある(2)徐々に痛みを感じるようになった(3)動くことで痛みがやわらぐ(4)安静にしていても改善しない(5)夜間疼痛(起きると改善)。これら5項目のうち、4項目に当てはまれば、強直性脊椎炎の可能性があります」

 厄介なのは、症状の進行が非常にゆっくりであること。症状の出現から診断に至るまで、平均9年という調査結果がある。さらに、「見るからに分かる」病気でなく、知名度も低いため、病気に対する理解を得られにくい。

「日常生活の影響として、『痛い時は動けない。でも、痛くない時は普通』『体の向きを変えられない。でも、見た目は普通』などがあります」

■就労状況にも違い

 患者によっては、痛みがある時はまったく動けないほどひどいが、ケロッと治る。体が動かず、向きを変えられないため、「目だけで人を追う」「会釈ができない」「上目遣い」「イスにそっくり返って座る」「呼びかけられても振り向けない」となりがち。本人はしたくてしていることではなく、病気ゆえに仕方がないことなのだが、病気を知らない人にとっては「怠けている」「横柄」「無愛想」などと映る。

 当然ながら、生活の質も著しく下がる。うがいができない、靴下をはけない、下に落ちたものを拾えない、上方にある男女別のトイレの標識が見えない、頭より高いものを取れない、車の運転ができない――といった、“健康な人が意識せずにできていること”が、できなくなるのだ。

「一般就労者と強直性脊椎炎の患者の就労参加状況を比較すると、雇用率は1.1~1.3倍低く、病欠日数は一般人9~12日に対し、強直性脊椎炎の人は6~22日、生産性は8%低下し、2週間につき1.9時間長く仕事をしないと仕事に追いつけない」

 治療は、第1選択として非ステロイド性消炎鎮痛薬が用いられる。ステロイドの局所注射、人工関節の手術療法が検討される場合もある。2010年には生物学的製剤TNF阻害薬も適応されるようになった。

 いずれも根治療法ではないが、早期治療で症状の進行を抑えられることがある。TNF阻害薬に至っては、ある条件を満たす患者には、非常に高い有効性が期待できることが研究で明らかになっている。

「強直性脊椎炎を疑ったら、まず詳しい医師を探す。リウマチ医や整形外科医が比較的詳しく、脊椎関節炎学会に所属する医師が特に詳しいです」

 あなたの腰痛はもしかして……。

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