保険適用で負担段違い ツラい股関節痛にはMISがいい

写真はイメージ/(C)日刊ゲンダイ
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 股関節の痛みの大半を占めるのが「変形性股関節症」。もし、あなたの奥さんや母親が変形性股関節症なら、知っておきたいのが「MIS=Minimally Invasive Surgery(最小侵襲手術)」だ。10年以上前からMISを行う「湘南鎌倉人工関節センター」の平川和男センター長に話を聞いた。

 変形性股関節症は数年から数十年かけて進行する。最初は生活の改善、運動、薬物といった保存療法がおこなわれる。痛みが強くなり、生活に支障が出てくれば、手術が検討される。代表的な方法が「人工股関節置換術」だ。

「人工股関節に替えることで、つらい痛みから解放され、活動的な生活を取り戻すことができます。ただし、人工股関節は耐久性(15~20年)にまだ問題があり、いずれ再手術が必要になる。そのため、手術の主な対象は50歳以上になります」

 日本では人工股関節置換術を検討した方がいい人でも、手術を受けず、痛みにひたすら耐えている人が少なくない。手術の負担が大きいことが、大きな理由のひとつだ。

 従来法では、股関節付近の皮膚を15~20センチ切り開き、変形した骨盤側の臼蓋を削り、人工関節を埋め込み、切開部分を縫い合わせる。
 太ももには15~20センチの傷痕が残る。手術時間は2時間以上と長い。出血も多く、感染症や血栓症といった合併症のリスクがある。筋肉や腱を切り開くので、入院期間は1~3カ月。仕事や家庭のことを考えると、痛みがひどくても手術を躊躇する人がいるのは想像に難くない。

 それを何とかできないかという考えから開発されたのが、冒頭の「MIS」だ。

■高額療養費制度で10万円ほどに

「骨盤側の臼蓋を削って人工関節を埋め込む」などという、人工股関節置換術の“基本”は従来法と同じだが、特殊な器具を用いて、切開部分が小さく、筋肉や腱を傷つけない。

「傷痕は6~8センチで、手術時間は1時間ほど。傷が小さいので出血量は少なく、合併症も起こりにくい。従来法は合併症のリスクが6~8%ですが、当院のMISは2%以下です。入院期間は3~5日で、手術当日から立ち上がれ、翌日には歩行しながらリハビリ開始になります。お勧めはしていませんが、退院の翌日、電車に乗って出勤した人もいました」

 体への負担が少なく、社会復帰も早くできる。入院期間が短いので、医療費も少なくて済む。

「短所としては、受けられる医療機関が少ないことです。特殊な器具を使う上、技術を持つ医師が少ない。切開部分が小さいので、高い技術が必要だからです」

「MISができる」と掲げていても、入院期間が従来と同じなど、“総合力”で実情が追い付いていない医療機関もある、という報告も。

「MISは非常に優れていますが、手術であることには変わりない。合併症のリスクが低いとはいえ、ゼロではありません。手術を医師から提案されたら、セカンドオピニオンを受けるべき。年間手術件数が100件以下の医師や、1カ月以上などあまりに入院期間が長い医療機関は検討しなおした方がいいかもしれません」

 MIS人工股関節手術は健康保険適用。湘南鎌倉人工関節センターでは総額150万円ほど。このうち3割負担になり(サラリーマンの場合)、申請すれば高額療養費制度で10万円ほどになる(給与で異なる)。

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