血圧、アレルギー、睡眠が変化 暖かい家は健康寿命延ばす

厚手のカーテンは◎/(C)日刊ゲンダイ
厚手のカーテンは◎/(C)日刊ゲンダイ

 寒さは健康にとって大敵だ。気温が下がる冬は、高齢者を中心に死亡数が増える。死にたくなければ暖かい家に住んだ方がいい。
 厚労省の統計によると、心筋梗塞などの心臓病による死亡数は1月が最も多く、次いで2月、12月、3月と冬季に集中している。

 気温が下がって寒くなると、人は寒さが刺激となって血管が収縮し、血液量が減る。心臓はより大きな力で血液を送り出さなければならないため血圧が上がり、心臓の負担が増えるのだ。

 また、寒くなると代謝を活発にして体温を上げるため、アドレナリンが過剰に分泌される。これによって血液が固まりやすくなり、心筋梗塞や脳梗塞の原因となる。

 これは室外の気温だけでなく、住居内の温度でも同じ。慶応大理工学部の伊香賀俊治教授らの調査によると、「高断熱のモデル住宅」では、「断熱性能が低い住宅」よりも起床時の最高血圧が6㎜Hg低いという結果が出た。

 また、近畿大建築学部の岩前篤教授の調査では、「断熱性能が低い住宅」から「高断熱高気密住宅」への転居によって、気管支ぜんそく、のどの痛み、せき、アトピー性皮膚炎、手足の冷え、アレルギー性結膜炎、アレルギー性鼻炎といった症状が改善した。睡眠の質がアップするというデータもある。暖かい家に住めば、健康を守ることができるのだ。

■簡単なリフォームでも効果あり

 東京都健康長寿医療センター研究所の高橋龍太郎副所長は言う。
「高齢になると、家の中で過ごす時間が長くなります。寒い時季に外出する際は、厚着をするなどそれなりに寒さ対策をして出かける人も多いのですが、家の中では薄着のまま過ごしているケースがほとんどです。断熱レベルが低い家は外気温に合わせて室内の温度も下がりますから、温度変化によって血圧が急激に上下動するリスクがアップします。部屋全体が暖まっている適温での生活が、血圧を安定させることにつながります」

 さらに、高断熱の住宅は外気の影響が少なく、湿度をコントロールしてカビの発生を抑えることができる。

「カビはアレルギーを悪化させる大きな要因です。断熱レベルの高い住宅で、目、鼻、皮膚などのアレルギー疾患が改善されるのは、カビによる影響が少ないためだと考えられます。ニュージーランドのオタゴ大が2年間にわたって古い家1400戸を対象に行った大規模調査では、断熱改修した住宅は湿度変化が少なく、断熱材入りの家の住人の方が、風邪や気管支疾患によって学校や会社を休むケースが少なかった。カビの臭いが減り、通院や入院も減ったという結果が出ています」(高橋副所長)

 断熱レベルの低い家から高断熱高気密の住宅へ引っ越すのは簡単ではないが、リフォームするだけでも効果はある。

「断熱レベルが低い家では、いくら暖房を稼働させても効果が少なく、体感温度は上がらない。床と天井に断熱材を入れたり、内窓を設置するリフォームなら、それほど費用はかかりません。それも難しい場合は、カーテンを厚手のものに交換したり、すき間テープなどで窓からのすき間風を防いだり、床に断熱シートを敷くだけでも効果があります」(高橋副所長)

 健康的に暮らしたいなら、寒さを我慢して生活するのはやめた方がいい。

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