うつ病長引かす「男性ホルモン」低下 数値下げない生活改善

写真はイメージ/(C)日刊ゲンダイ
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 うつ病がなかなかよくならなければ男性ホルモンの低下が関係しているかもしれない。それを補充することで、うつ病が改善する可能性がある。順天堂大学医学部付属順天堂医院泌尿器科の久末伸一准教授に聞いた。

 久末医師は、テストステロンなどの男性ホルモンの減少で、精神、体、性機能にさまざまな不調が生じるLOH症候群(男性更年期障害)を中心に診ている。

 順天堂医院のほか、3年半ほど前から都内のクリニックで精神科医とともに診察・治療にあたっているが、うつ病の患者には、LOH症候群も考えられるケースが珍しくないという。

「うつ病患者さんの血液中の男性ホルモン(遊離テストステロン)を調べると、ほぼ100%、その年齢の平均的な値より低い。遊離テストステロン値8.5pg/ml以下がLOH症候群の治療を行う基準値で、それに該当するうつ病患者さんが大半なのです」

 それら遊離テストステロン値が低い患者にテストステロンを投与すると、明らかにうつ病症状が改善するという。

 一方で、ほとんど改善しない患者もいる。久末医師らが調べたところ、うつ病の重症度や遊離テストステロンの値の低さとは関係していなかった。

「しかし、共通項がありました。テストステロンが効かない人は、抗うつ薬をはじめとするうつ病の薬をたくさん飲んでいたのです」

 LOH症候群とうつ病は、うつ状態、不安、イライラ、不眠、集中力・記憶力・性欲の減退など、似た症状がいくつもある。

 男性のうつ病には、LOH症候群の側面からの治療も有効なのではないか――。

 久末医師はそう考えており、さらに、「うつ病の薬をたくさん飲むことで、作用が強くなり過ぎ、テストステロンの投与で“引き戻せる”状態ではなくなったのではないか。うつ病の治療の早い段階でテストステロンを投与すれば、うつ病の治りがよくなるのではないか」とみている。

■筋肉量が増えれば効果的

 とはいえ、まずはテストステロンの値を劇的に下げない予防が重要だ。ポイントは4つある。

 第1は睡眠。睡眠時間が減ると、テストステロンは減る。徹夜をすれば急激に下がり、何週間ももとに戻らないこともある。

 第2はアルコール。

「慢性的な飲酒はテストステロンを減少させます。毎日お酒を飲んでいる人が飲酒をやめると7割はテストステロン値が上がる。アルコール依存症一歩手前の患者さんに2週間禁酒してもらった時は、それだけで遊離テストステロン値が1から7にまで上昇しました」

 第3は運動。筋肉量とテストステロン量は相互関係にあり、筋肉量が増えればテストステロンも増える。

 そして、第4は食事。ニンニク、ニラ、タマネギなどに含まれるアリシンという成分が、テストステロンを増やす。

 うつ病にならない、悪化させないために、知っておきたい知識だ。

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